土と共に生きる百姓 竹岡正行(31)

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豊かな自然がある土地に移住して、農業に挑戦したい。そして農業はこだわりの無農薬で栽培して・・・。若くして農業を志す人にとって、無農薬で栽培する農業という響きもまた、目指す形のひとつかもしれません。今回お話を聞いてきたのは、20代から丹波市笛路村で無農薬の農業を生業としてきた竹岡さん。様々な人との出会い・人生経験から行き着いた今の農業やライフスタイルについて、お聞きしてきました。

 

 

 

【取材班】こんにちは!今日は取材よろしくお願いいたします!笛路村、とっても素敵なところですね!

 

【竹岡さん】いらっしゃーい。今日はよろしく。笛路村、本当にいいところだよね。

 

【取材班】以前は横山さんの事も取材させて頂いたんですよ。この環境に若者が引き寄せられるのかな・・。今回は、竹岡さんにもなぜこの地に来られたのか、今何をされているかなどお聞きさせて頂ければと思っています!よろしくお願いいたします。

 

【竹岡さん】はーい。こちらこそよろしく!

 

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山間部の丹波の中でも、さらに山間の秘境のような笛路村。

 

 

美味しい食べ物がつなぐ、人と人の距離

【取材班】竹岡さんは神戸からのIターンでしたよね?この丹波の地に来るきっかけって、あったんですか?

 

【竹岡さん】大学生の時になるんだけど、当時は大学に行きながら、脳性麻痺の方の24時間在宅介護をしてたんだよね。だけど、その現場で人と人が立場を越えて素直に関わるのが難しいなって思ってて、今もそれは思うんだけど。色々な立場の人がいて、立場があることで思いが素直に伝わらないこととか多くて。

 

【竹岡さん】たまたま当時、父の建てた家があった笛路村に遊びに行って村の人に黒豆の枝豆をもらったんだよ。その黒豆を介護の現場でみんなで食べたら、立場関係無くみんなで感動できたんだよね。4年間笑った顔を見たことない人とかが満面の笑みでさ。その時に「美味い食べ物って、時間かけてもなかなか越えられない人間関係を飛び越えていくんだ」と、そんな事を思った事があって。

 

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ちょうど、横山さんもお仕事しに来ていました。

 

【取材班】なるほど。面白い経験ですねえ〜。介護の現場で悩んでた悩みを、農業(黒豆という美味しい食べ物)が解決したと。

 

【竹岡さん】そうそう、その時黒豆をくれた農家さんは、移住してきてとてもお世話になった方なんだけど、その人を含めて、丹波の生産者さんの技術や意識の高さ「百姓のクオリティ」がすごいって事も、独立して7年程やってきたから感じることも多くなったね。

 

【取材班】在宅介護から農業って一見畑違いの職業選択に見えるけど、竹岡さんの中では農業を極めて、美味しいものを生産することが、当時の悩みを解決する手法のひとつだったんですね。

 

【竹岡さん】うん、どちらも生活することに根ざしてるから根底では繋がってるからね。

 

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多品目のお野菜を作っておられます。

 

非生産的活動と、生産活動

 

【取材班】農業を志して、そのきっかけになった笛路村に移住してきた経緯はイメージできたんですが、教育大学を卒業して、農業の道に進むって方向転換も、なかなか大きな決断ですよね。

 

【竹岡さん】そうだよね。学生の当時働き方というか生活の在り方についても考えて。音楽が好きでバンドをやってて、続けたかったんだけどお金もらってやりたいかと言われれば何か違うし、介護を仕事にするのも今までの障がい者との関わりが無償ボランティアだったので本質的に何か違ってしまう気がしてて。

そんな時先輩に「芸術活動も介護も、基本的には非生産的活動や。お金を生む目的で芸術も介護もしないやろ?」と言われて。何かその時に、本質的にやりたい事(=おもろいこと)が非生産的活動なら、生きていくために生産活動をしよう、なんて思った結果、大学を卒業してすぐ農業法人に研修しに行くことになるんだよね。

 

【取材班】確かに、農業は一番直接的な生産活動という感じがしますね。それに、農業は自分で時間を左右できる部分も多そうな感じはします。

 

【竹岡さん】そうそう、実際そうだからこそ、しっかり生活を組み立てて、時間を空けておもろいことをやろう。って思えるようになったかな。

 

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【取材班】確かに、竹岡さんは、お仕事の農業以外にもNPO法人を立ち上げて活動もされていますよね?「NPO法人丹(まごころ)のたね」では、どんな活動をされているんですか?

 

【竹岡さん】NPOは立ち上げてって言っても、理事や仲間に随分助けてもらって支えてもらってるから自分は全然大したことないねんけどね(笑)

色んなプロジェクトがあって、一言では言えないNPOになっちゃてるけど、簡単に言うと地域のために一緒に何かしたい人やりましょうやってこと。

 

特に僕が現場レベルで関わってるのは、笛路村に関係する「人が生活してきた里山というフィールドで、教育的・福祉的な活動をしたい」ってことかな。NPOの中では、「里山プロジェクト」って呼んでるけど、笛路みたいに土があるところっていうのは、昔から百姓が息づいて食材を生産して、そこで子どもが育って、大人になって役割を全うして、年老いていく。これが普通だと思うねん。今はそれぞれが切り離されてしまって、違和感があるねんな。

青少年も、お年寄りも、子どもも、障害者も、色んな立場の人が里山に居場所があって、支え合って、成長・成熟できるコミュニティになっていけたらいいなって、一村人として思うよね。

 

 

【竹岡さん】具体的な事業としては、障がい者の働く場所「ナチュラルタイム」、障がい児を中心にした「ナチュラルキャンプ」。や、里山ようちえん「ふえっこ」。都市部の青少年が笛路の維持管理の草刈りを行う「物乞いキャンプ」などなど、今年は笛路で新卒の方の企業研修なんかも実現するよ。

子どもたちのお昼ご飯を地域のおばちゃんたちが作ってくれたり、キャンプのスタッフとして村の内外を問わず老若男女が集まってくれたり、みんなが居場所と役割をもって、笛路村で活動できたら面白いよね。

 

【取材班】面白いなあ。村全体のことを考えて、よりみんなが幸せに暮らせるあり方を考えてる印象を受けました、十分生産活動な気もしてきますが、あくまでここは、竹岡さんにとってはおもろい事、にあたるんですね〜。

 

【竹岡さん】村のこと考えてるなんてそれは言い過ぎやわ…ただ、個人的におもろいなぁと思ってるねん。具現していったら、自分も村も関わる人も皆心地いいと思う。そうそう、あくまでお金を稼ぐ「仕事」とは別として考える事で頭の中で集中するとこが違ってくるよね。また、そうやってやるから純粋に良い活動が出来るんじゃないかと思ったりするよ。

 

 

農家としてのこだわりと、農家ベースのパラレルワーク

 

 

【取材班】話掘れば掘るほどたくさん面白い話が出て来ちゃうので(笑)ちょっと農業の事もお話させて頂ければと思います!無農薬で多品目を生産する農家さんとして、竹岡さんの中で色々なこだわりがあると思うのですが、一番のこだわりは何でしょうか?

 

【竹岡さん】一応根菜がメインやで(笑)他も栽培してるけど。こだわっている思考回路としては「生きるために育てる」というイメージを持って栽培することなんだけど…ちょっと質問とズレるから。

分かりやすく言うと、「土」かな・・。お百姓さんのお仕事って、土から恩恵を受けているのね。だから農業事業の半分以上のエネルギーを土を良くすることに注いでるよ。

 

【取材班】そういえば、昨年から酵素風呂もやってますよね。この里山空間の中で、酵素の土に包まれる感じ、ファンもつきそうですよね。あの土が、肥料になったりするって事ですかね??

 

【竹岡さん】そう。言うとくけど、良い酵素作るのにはむちゃくちゃ手間も時間もかかってるねんで。ついでにお金も(笑)手間も時間も半端じゃない。だけど、あえてそこに一番エネルギーを注ぐのは、野菜を育てる上で土を一番に考えてるからやねん。

話それたけど、酵素風呂は糠が一次発酵する時に発酵熱が出るんだけど、その中に包まれる事で体を温めて、免疫機能を上げてくれる。そして出来た酵素を二次発酵させたあと、土に混ぜ込んでいく。これがおもしろくて、普通肥料を入れすぎると微生物が死んでしまって根が弱ったりして野菜が美味しく育たないんだよね、でも酵素は3年くらい試験してるけど、たくさん入れても土壌障害や野菜の生育障害が出ない。葉の色も濃くならない。逆に、気候変動でむちゃくちゃ雨降ったりしても土の中で酵素が対応してくれてるのか、美味しい野菜がちゃんと育ったりするねん。

 

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【竹岡さん】僕は、とことん自然の力を引き出して安全で良い野菜を育てて、出来るだけお客様に喜ばれる野菜をお届けしたい。でも普通に酵素を買ってきて野菜を育てたら、値段が高くなってしまう。けれど、酵素風呂でお客さんに入ってもらって、心も身体も喜んでもらい、そこからまた肥料として活用する。そうすることで、仮に一般の野菜と同じ値で売ったとしても持続していける野菜生産が可能になるねん。

【取材班】はーー・・。ものすごい勉強になります、野菜のクオリティを上げるための土の生産過程で酵素風呂として人に喜んでもらって、より野菜を良いものにしていけるんですね。素晴らしいですね。

 

【竹岡さん】あくまでむちゃくちゃ手間かかるし生き物飼ってるようなものやから1年365日本当に休み無くなるけどね。人の縁て有難いなぁといつも思うのだけど、酵素風呂だけじゃなくて、僕みたいな者に宝物のような大切な技術やアイデアを教えてくれる人に恵まれてるねん。

それに、こうやって生産活動の中で(儲からなくても)いくらか稼げる刀を何本か持っておくと、やりたい事をやれるようになっていくかなあと思う。売り上げや収入を増やそうと目先のことに捉われすぎると、余裕を無くして大切なもの失ったりするやん。自分にとってまともな判断が出来て、お金を払って下さるお客様にどうやったら喜んでもらるかって仕事になるまで、質素でも上手くいかなくても地道に耐えきるかが勝負って感じだよね(笑)
だから、すぐに売り上げを上げないと継続できないような事業展開はしない。個人事業だけど農業を始めてから、よりお金のことも身近に自然に考えられるようになったなぁ。

 

【取材班】いやーーー。名言頂きました。竹岡さんってほんと、30代前半とは思えないほど、思考の整理がされている感じがしますね。

 

【竹岡さん】僕はほんと全然ダメな人間やから。でも農業やってると、自分と向き合う時間がたくさんあるんだよね。たまたま自分の場合は移住してきた時に近所の方にすごくお世話になって、毎日ごはん食べさせてもらってたんだけど、そのおかげでこの村とこうやって関わっていきたいとか、こんな百姓になりたいとか、お客さんとこう関わりたいとか、自分の考えを整理しながら、時間をかけてやれる状況ができたと思ってる。

だから、移住してきて2,3年、毎日家族のように御飯を出してくれた笛路村の方が居なかったら、今の僕は居ないよね。

 

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今回竹岡さんの取材をしていて、働くこと、収入を得ること、地域とつながること、色んな面で自ら考えて行動する機会が田舎や農業にたくさんあるのではないかなあと感じさせられました。「今までの事業の在り方・会社を大きくたくさん稼いで、という時代から、在り方や暮らしを追求する方へシフトしていきたい。不満や不安に囚われる人生はつらいかな。」と、竹岡さんのお話を聞いていると自分の生活やこれからの時代の流れを考えさせられます。竹岡農園さんのお野菜もそうですが、より良いものを追求する時代を、もしかしたら田舎暮らしだと身近に感じることができるかもしれません。