たんばの仕事

Vol.126 / 2023.03.09

リサイクル原料100%でポリ袋を生産、みんなの当たり前を支える企業

中野商事

業種
  • 製造業

コンビニ、スーパー、ホームセンター、自宅等。ほぼ毎日、必ず目にし、手にとるもの。そのうちの一つがポリ袋。丹波市の南西部にある山南町和田地区で約50年前から、みんなにとって日常生活に欠かすことが出来ないポリ袋を製造されてきた、中野商事を取材してきました。

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◆当たり前に存在するポリ袋が出来るまでの流れと世の中からの影響

◆子どもの頃から遊び場だった工場を支えたい~見る側から支える側へ~

◆みんなの“当たり前”を支え、供給していく仲間を募集

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今回は、工場長をされている中野慎さんにお話を伺ってきました。

当たり前に存在するポリ袋が出来るまでの流れと世の中からの影響

中野商事の事業内容を教えてください。

弊社の事業は業務用ポリ袋の元になる原反の製造と、原反からポリ袋への加工を行っています。

業務用というのは、ホームセンターで売っているようなゴミ袋のことです。

原材料の調達と販売は商社に委託してますので、弊社は一言でいえば加工業ということになります。

商社はあくまで原材料の支給と販売をしてくれてますので、製造工程に関しては私が直接ユーザーと毎回打ち合わせをして、納期を決めて受注生産するといった形で作っています。

弊社の特徴としては、リサイクル原料を100%使って製造していることですね。

なるほど。そのリサイクル原料を使用している理由は何でしょう?

当初はコスト削減ですね。過去、海外から大量に安価なポリ袋製品が国内に入ってくるようになった際に、コストを削減する必要に迫られて、試しにリサイクルされた原料100%でやってみたら普通に製造できるなという話になりまして。

それで、今日まで100%リサイクル原料で製造しています。

1970年頃は色んな材料で製造してたらしいんですけど、最終的にはリサイクル材だけでいこうかとなったんです。

今となってはSDGsといった世の中の流れも出てきたので、再生原料ではないバージン原料は使う想定がないですね。

ちなみにリサイクル材って、どうやって集めるんでしょう?

ポリ袋を製造する過程でどうしても発生するロスから作ったり、あとよく飲食店で使うポリ手袋の型抜きしたやつとか、そういう色んなものを原料に変える再生業者がありまして、そこから仕入れています。

再生原料は、まず汚れてたらアウトなんですよ。洗うのがどうしても手間になるので、製造過程でどうしても出てくる、汚れる前のロスを再生してるんですね。

なるほど。中野商事では月間にどれくらいの量のポリ袋を製造されているんですか?

重量で数えますと、一カ月で50~65トン程ですね。

50トン?!すごい量ですね!ポリ袋からは想像つかない数字ですけど・・・

良くも悪くもポリ袋は薄利多売の商売なので、案外これでもまだ少ない方なんです。

先ほどの話で、輸入品が大量に入ってきた頃からこの20年程で同業者が半分くらいになりました。

この兵庫県内でも、私の知ってる範疇でも10件以上あったのが4件ほどになっています。

ちなみに、丹波市に合併する前の旧山南町時代には、弊社で旧山南町のゴミ袋を作っていました。父の時代で、今の山南庁舎ができる前の話です。

真っ黄色でカシャカシャする袋。昔は各町ごとに袋があったんですね。

具体的に、ポリ袋はどのように作られているんでしょう?

ポリ袋を作るのに、大きく2つの工程があります。まず原材料から原反をつくる工程と、その原反をゴミ袋に加工する工程と。

基本的に男性が主に原反を作る工程、女性が原反から袋に加工する工程を担っています。

原反は、まずプラスチックに顔料を入れて、均一になるように混ぜ込みます。

案外色作るのは簡単なんですが、その逆で色を抜くとなれば相当大変ですけどね。

例えば黒から白にする時に、白い袋に黒い筋が入ったりするので、それが落ちるまで流さないといけないんです。

なるほど。ちなみにこれは何色になるんでしょう?

それは黒色ですね。黒は色が強いので、緑色やピンク色とか他の色がついた原材料を混ぜてもちゃんと黒になるんですよ。

へー、面白いですね!

混ぜ終わったら、それを裏のタンクから吸い上げて、熱で溶かし、バルーン状に膨らませていきます。

しわが出来ないよううまくローラーで巻きつけて作っていきます。それで原反が出来上がります。

原反は数百kgありますので、リフトなんかを使ってポリ袋の加工場へ運び入れます。

これでそんなに重たいんですか?!見た目からはわからないもんですね。

そうなんです、意外と重いんですよ。それであとは、原反から規格サイズにカットして、袋詰めしていくっていう感じですね。

よくわかりました。ポリ袋製造において、先ほどの話では輸入の影響を受けるとのことですが、他に事業が左右される外的要因って何かあるんですか?

直近で言いますと、コロナ禍では消毒の機会が増えたので、必然的にゴミが増えたので需要は増えましたね。あとは原油の値段。

材料費と電気代がかなり上がってきました。あとやっぱり、直接的ではないですが災害とかも影響がありますね。捨てるものも増えますし。

一番大きく影響が出るのは為替です。この業界は、根本的な同業他社と言われればほぼ海外からの輸入品ですね。

円安にふれてくると輸入が減って、その分「国内で調達しよう」という動きが強まるといった具合です。

なるほど。それでも国内の同業が減ってきたら、生き残り組はある意味チャンスと言えそうです。

そうですね。市場の動向を注意しつつ、しかるべきタイミングで仕掛けることが出来れば、といった感じでしょうか。

やっぱり、ポリ袋は当たり前にないといけない存在なので、安定した供給・調達がこの市場の使命かなと感じています。

子どもの頃から遊び場だった工場を支えたい~見る側から支える側へ~

中野商事の創業はいつなんでしょう?

祖父が創業者で、この仕事自体は1970年頃からやっています。父が二代目、現在の三代目社長は母がやっています。

私は父の代から会社に合流しました。途中、社名変更したりもありまして、中野商事としては割と最近で2021年からになります。

私はリアルタイムでいませんでしたが、当初はポリ袋以外にもお弁当にいれるバラン等のそういったフィルム系、ポリ袋に派生してナイロン製の糸とかも作ってたそうです。

中野さんは丹波市生まれ丹波市育ちですか?

そうです。柏原高校を卒業した後、大阪のビジネス関係の専門学校へ行きまして、その後20代前半は福井県の同業者の工場へ修行として勤務してました。

この業界はそれからずっと携わっています。弊社に合流したのは2000年の、25歳頃でした。

ここの家業を継ぐことは昔から意識されてたんですか?

いやあ、意識はしてなかったですね。特に言われることもなく。

ただ、小さい頃から育った環境で、ここの工場は遊び場みたいなもんで、それがなくなるのはさみしいなってのはありました。

機械とか見るのも好きでしたし。親曰く、子どもの頃はじーっと見てたらしいです(笑)

機械ってなんか見入ってしまう魅力がありますよね。ここでの働き方はどんな感じになるんでしょう?

原反を作る装置は材料のプラスチックを溶かすために火を使うので、効率性の観点から24時間稼働させる必要があるので、3交代のシフト制をとっています。

日勤8~16時、純夜勤16~0時、夜勤0~8時で、基本的には一週間ごとに交代しています。

毎週月曜日から金曜日まで24時間稼働して、土日止めて、また月曜日から稼働させると。

基本的に正社員は土日休みで、土曜日は必要に応じて動かしているといった感じです。繁忙期や、何かトラブルで止まってしまったりとか。

先日のように大雪で製造できなくなった場合なんかですね。

基本的に平日は同じ作業ですが、流れ作業ではないので、ライン作業に組み込まれるといった感覚ではないかなと思いますね。

この二つは全く違う感じで、加工作業はマイペースにできる仕事。原反の方は機械の作業があるので。

なるほど。原反の工程は男性が行うというお話でしたが、それは力仕事だからですか?

そうですね、別に男性じゃないといけないってことは全くないんですけど、力仕事があるのと、機械を触るので油で汚れたりもしますし。

やりたいという女性がいれば、それはそれで構わないと思っています。

設備が故障した時はどうされてるんですか?

簡単な修理は私が行います。難しい場合は電気屋さんを呼んだり。モーターとかは総替えになりますね。構造自体は難しいものじゃないんですよ。

複雑なのは高熱でプラスチックを溶かす装置と、あとポリ袋の厚みを調整する装置くらいですかね。

設備の故障よりも、一番困るのは作ってる途中とかの仕様変更ですね。単純にコストカットとかするのに厚み変えてとか、幅をちょっと狭くしてとか。

ポリ袋はサイズ規格がほぼ決まってるので、厚みで調整したいとか。

工場長としては、そういった事がそもそも発生しないように、事前の打ち合わせでしっかり話を固めるよう意識しています。

みんなの“当たり前”を支え、供給していく仲間を募集

中野商事の今後の展開はどのようにお考えですか?

とりあえず今円安で輸入が減ってきてるんで、今国内にしっかりとした生産拠点をつくるチャンスかなと思っています。

円高の際に輸入で減った分が今戻ってきつつあるので、いかにこの時期に基盤をつくれるかどうか。

この業界、2000年代前半は輸入でほとんどを占められて、この20年の間に国内で生産する現場がだいぶ減ったからこそ、基盤を整えるタイミングですかね。

仕入れや販売まで自社で行えるのが理想的なんでしょうか?

最終的には全部できるのが理想でしょうね。

ただ、単純に毎月60トン程の再生原料を手配できるかと言われればやはり今すぐは難しいので、現状は加工・製造に注力して、基盤をつくるのが何より大切かなと思います。

バージン原料はお金さえだせばなんぼでも手に入るんですけどね。

なるほど。現時点で会社のスタッフは何人いますか?

正社員は男性が私含めて3名、女性も3名。パートが女性2名ですね。平均年齢としては40代くらいでしょうか。

全員が生産現場に入って作業をしています。今のスタッフは大体丹波市か近隣から勤務されていますね。

今後どういう人にきてほしいですか?

何より毎日、ちゃんときてくれる人ですね。毎日製造するものなので、ここから始まらないとどうしようもないかなと。

年齢に縛りはありませんが、技術は日々積み上げていくもので、経験がものをいう側面がありますから、長く働いてくれる方が嬉しいです。

原反作業の方ではフォークリフトを使いますので、免許をお持ちの方は別途手当を出しています。

最後に一言お願いします。

ポリ袋って、日常生活にある物の中でも最も“当たり前”にあって然るべき存在で、それだけ誰にとっても必要不可欠なものだったりします。

有事の際なら余計に。為替に左右されると話しましたが、どういう状況でも当たり前に供給していく使命があると感じています。

ほとんどの人にとって、なくてはならないものを、この国内で生産していく。

その確固たる基盤を作っていきたいと思っていますので、共に支えていきたいと感じてくださった方は是非お問い合わせください。

ありがとうございました!

 

 

 

日常生活において、ものすごく当たり前に在るポリ袋。ものすごく当たり前に在るのに、それがどのように作られているかを知っている人はほとんど居ないのではないかと思います。当たり前を支える仕事というのは、それくらい人の目につかないところで支えられているんだなと感じました。

※この記事は2023年2月6日に取材した情報をもとに作成いたしました。

 

事業者名 中野商事
代表者名 中野あつ子
669-3157
所在地 兵庫県丹波市山南町和田526-2
電話番号 0795-70-8323
FAX 0795-70-8088