【起業インタビュー】Gluten Free Bakery 369

メンデスカワハラ見尚子さん~アレルギーを持つ子どもの為に作ってきたグルテンフリーのパン屋~

移住前はどんな暮らしをされてましたか?

丹波市に来る前は実家が大阪市北区で、夫とは同じ大阪市の港区に住んでました。当時はラジオ局で普通に働いてて、夫は港湾の積み荷関係で働いてましたね。

移住した経緯を教えてください

元々、別に田舎暮らししたいと思ってた訳じゃなかったんです。たまたまテレビを見てて、田舎の物件を紹介して次の日には内見できるよっていう番組で。それが丹波篠山市の家やったんですけど、次の日見にいって、田舎暮らし考えてみよかという話になってきて。

当時結婚して子どもが2人いて、長女は生まれつきアレルギーがあって、食べ物のことを考えざるを得ない状況に陥ってたんです。長男も同様で。食糧危機が来るんちゃうかみたいな考えもあったし、自分で物が作れるような技術もっとかなあかんというのもあったし。移住を機に、食べ物を見直したいというのと、色々考えて丹波市へ移住しました。それが2014年頃で、最初は春日町の大路地区へ。

以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?

子育てはこっちの方が断然しやすいって感じてますね。結構な都会に住んでたから、ちょっと近くの公園に遊びに行くのも相当気を張りつめていかなあかんみたいな。子どもが歩道に飛び出さないようにとか、大きい道路は怖いし、子どもだけじゃ行けないところばかりで。こっち来てから気を使う場面があまりないことが大きいなと。

丹波市に来た時は家にテレビなかったんですよ。なので暇すぎて20時とかには寝てましたね(笑)
不便さは特に感じないけど、近所付き合いとかはちゃんと馴染めるかどうかは少し気にしてましたね。でも、子どもらを連れてたおかげで、何のハードルもなく受け入れてくれた感じがありました。

なぜパン屋を始めようと思ったんでしょう?

元々、グルテンフリーのパン自体は子どもの為にずっと作ってたんですよ。娘が小麦アレルギーなので。2022年に今の家に引越した時、お店のことは実は全く考えてなくて。『家の前入りにくいけど出入り家族だけやしいいよね』ってことで(笑)

引越しから2カ月経って、色々考え始めて。周囲の友人は自営業が多くて手に職持ってるけど自分は何もない、パートで働いてたけど夢は専業主婦やし、子ども優先でいたいし自由がいいから外に働きにいくの嫌やしで続かない。

『自分には何があるやろ?』って考えたら、結婚生活と子育てとアレルギーだけが延々続いてることに気づいて。じゃあ、ずっと作ってきたパン屋にしようと思い立ったのが6月頃。空き家バンクの補助メニューは厨房の為に開業型を利用して、11月にオープンしました。

丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?

規模も小さいですし、特になかったですね。普通のパン屋とは違うから、「作れる量はかなり少ないけどニーズだけはあるんちゃうかな」とは思ってたんです。年輩の方でも慢性的に便秘とか下痢してる人が気づいてなかっただけで、最近になって小麦アレルギーであることがわかったりとよく聞いてたので。

やってみて出てきた困った事としては、秋の栗と黒豆の時期に、通販用の段ボールが市内のお店から無くなって発送できず困ったことがあります。60・80サイズのやつが。こういうのは実際やってみないとわからないですね。

当初の資金繰りはどうされましたか?

資金は全然お金かかってないから大丈夫でした。小さい機材しか使わないし、大きいのは工事費くらいでしたね。特段必要な準備もそれほどなく、厨房の工事をただ待つのみみたいな感じでした。

起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?

自分でインターネットで調べました。「パン屋するには」とかで検索して(笑)
開業届出しにいって、青色申告しますって言って。ネットの記事見ながら「オーブンいるな」とか、「こういうのいるねんな」とか。食品衛生の資格もコロナの関係でオンラインで受講できましたし。

必要な機材や備品は結構Yahoo!オークションで調達しましたね。テーブルとか、シンクとか。「パン屋ってこんなんかな」っていうイメージで出来ました。お店は家に適当な場所がなかったから『玄関でいいや』で決めました。お店出来てから、商工会に入りましたね。

屋号の由来は何でしょう?

外国人から見てもわかるようにするために、「Gluten Free Bakery」とアルファベット表記にしました。あと369は、ニコラ・テスラっていうエジソンの弟子が、『あなたが3、6、9という数字の素晴らしさを知れば、宇宙へのカギを手にすることができる』といった言葉を残してて、すごいエネルギーを感じられて好きなので、それで。

369については結構、『369は何て読むんですか?』とか『弥勒菩薩とかですか?』とかよく聞かれるんです(笑)
まあでも、369って見て、その人が「こうなんかな」って思うのが正解ってことでいいんじゃないかなと思ってます。

開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?

「まあ、こんなもんかな」って感じですね。繰り返しになりますが子育て優先したいし、夢は専業主婦なので、一般的なパン屋さんよりは頑張れてないと思います。すぐ休みたがるし。夫から『そんなに休んじゃダメなんじゃないかな』とか言われたりしてます(笑)

イベントは『来てほしい』と言われたら、相当遠くても行きます。でも、自分から出たいって行くことは基本的にないです。当然、イベントに出ると収入的にはいいんですけど、私一人なので疲れきってパン焼くのが嫌になるんですよね、一日ずっと焼くことになるから。パン屋で食っていくには人生かけないと成立しないんじゃないかと感じますが、今はそのターンじゃないですね。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

よかったのはやはり基本的に家にいれるし、自由が利くのがいいですね。

よくないのは、お客さんが沢山来る日と全然いない日の差が結構あって、読み切れないところ。でも、売れ残ったら子どもが沢山食べるし、自家消費は冷凍しとけばいいしで、助けてもらってます。

将来の展望はどのようにお考えですか?

夢は専業主婦ですが、あとドッグランをしたいので、近くで土地買えたらドッグランのカフェがしたいですね。カフェといっても、自分で料理するのは好きじゃないから、ちょっと考える必要がありますけど(笑)

お店も通販も、リピートしてくれる人が出てきましたし、遠方からわざわざ来てくれる人もいて。それで『いつ営業してるの?』と聞かれるから営業する日を決めてしまってるんですけど、理想は好きな時にオープンしたいんです。ゆくゆくは「決められた日に開けないといけない」っていう縛りをなくしたいですね。その為にまず目の前の、安心して食べられて、美味しいと言ってもらえるパンを焼いていこうと思ってます。

起業を考えている人へのアドバイスをお願いします

普通のパン屋じゃないので参考になるかわからないですけど、やりたいことを迷ってる人には、それは『やってみないとわからん』と言いたいですかね。頭で考えてても、やってみないとどうなるかわからないし、失敗してみないと改善も出来ないし。

夢とか好きなものがあるなら余計に、やってみた方がいいと思いますね。

 

※この記事は2023年11月1日に取材した情報をもとに作成いたしました。

 

事業者名  Gluten Free Bakery 369
代表者名  メンデスカワハラ見尚子
住所  兵庫県丹波市氷上町井中515-1
instagram  https://www.instagram.com/glutenfreebakery369/