藤本倫子さん~家のことも、地域のことも。4児のママが自分らしい暮らしを目指して始めた食堂~
丹波市へUターンされるまでの経緯を教えてください
丹波市山南町で生まれ育ち、柏原高校に行って、その後大阪にある追手門学院大学に進学しました。でも、バイトし始めたら働くことに面白さを感じてしまって、途中で退学してメイクの道を模索し始めました。
美容はとても厳しくて、飲食関係で働きながら続けてたんですけど、年末に熱を出した時、長男の妊娠が発覚したんです。それで、家を引き払って実家に帰ることにしました。2008年に帰ってきて結婚して長男を出産し、それから4人子どもを産むまでは専業主婦をしていました。
Uターンされてから起業されるまでの間はどんな生活でしたか?
2011年に次男を出産する前、その時のつわりをきっかけに、化学物質過敏症を発症したんです。特に匂いがダメで、都会に出るだけで頭痛がしてお腹を下すみたいな状態だったんです。それで色んなことを調べて、身の回りのものを無添加のものに変えたりと、安全性を気にするきっかけになりました。
それで、「食の安全性を伝えたい」と思ってたんですが、その方法をずっと模索してたんです。いつか飲食店がしたいと思ってたので、出産が終わったあとに、電話応対が苦手だったからコールセンターで働いたり、正社員として働いて自信つけようと思ってリゾートで働いたり、レストランで働いたり、途中体調を崩したこともあって自宅でエステしたり。
また、コロナ禍に突入する少し前に離婚することになったので、これから一家の大黒柱として、ずっと苦手だったお金のことや保険のことも知っておきたくて保険会社で働いたり。そんな時に何度か、知り合いを中心にご飯を振る舞う機会があって、「美味しい!」と言ってもらったことで「いけるかも」と思い始め、飲食店のことを具体的に考え始めたんです。
なぜ飲食店を始めようと思ったんでしょう?
中学3年生の時点で調理に興味はあったんです。調理師免許が取れる学校に行きたいと思ってたんですが、身内から「潰しがきかないから普通科にしとき」と言われて断念したんです。結果、一番潰しの効かない人生になってる気もしますが(笑)
過敏症を発症してから食の安全性について伝えたい思いもありましたし、これまでの仕事は接客をメインでやってきたので、専業主婦時代から「お店ならできる気がする」という思いもありました。
また、自宅周辺の地域でも休耕田が目につくようになってきて、子どもを4人産んだのも「兄弟がいなかったら学校に一緒に行く子がいなくなるのでは」という気持ちもありました。この環境を、子どもたちに「プラスの財産」としてつないでいく方法も合わせて考えた結果、今のさとやま食堂のカタチがいいかもしれないと思ったんです。
丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?
お客さんがきてくれるかが心配でしたね。来てもらえたら、喜んでもらえる自信はありましたが、来てもらうところまで届くかは不安でした。あと本当に心配していたのは、お金が借りられるかどうかでしたね。
今まで色んな仕事をしてきましたが、中途半端といえばそういう状態でした。それが逆に、色んな人脈としてつながりができていたこともあって、背中押してくれる人や相談できる人、「この件はあの人に聞こう」と思える人たちがいたのは大きかったです。
当初の資金繰りはどうされましたか?
商工会に相談して、公庫から借りることができました。あと開業の補助金を使わせてもらったり、足りない分は父にも借りてなんとか始めることができました。
ちょうどコロナ禍が明けた時期だったこともあって、運よくスムーズに融資いただけたのも大きかったです。
起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?
それも商工会ですね。あと、実際に飲食店をしている人にも相談しました。店のオペレーションとか、導線設計もそうですし、お金のことが苦手だったので、事業計画出してほしいと言われても、一瞬で眠たくなってました(笑)
ちゃんと知っててできる人に相談して、いろいろ助けてもらいながら準備を進めました。
屋号の由来は何でしょう?
前にエステをやってた時は「さとやまサロン」という名前でした。それでお店も「さとやま食堂〇〇」と、後に何かつけようと考えていたんですが、「いや、むしろ、さとやま食堂でいこう!」と決めました(笑)
「里山」は自分の中でずっとキーワードです。「懐かしくて新しい」「古き良き里山の風景を今に」といったコンセプトは持ちつつ、でもあまり気取りたくないし、ハードルをあげたくないし、「カフェ」もなんか違う。それで、「食堂」が一番素朴で、しっくりきたんです。
開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?
大変ですね、体力が(笑)
でも、おかげさまで市内外からたくさん来ていただいて、すごくありがたいです。朝ご飯も最初は予約がなくても開けようかと思ってやってましたが、「いざ沢山来られたらどうしよ、仕込み間に合うかな」と不安を感じることも多かったので、途中から予約制にしたりと、日々こまごまと改善しながら営業しています。
それでも、一日お客さんが0の時もありましたし、逆に沢山お越しになる日もあるので、お客さんの来てない日が今のところそんなに不安ではないですね。大変ですけど、楽しくさせてもらっています。
やはり、遠方から来てもらえるのはうれしいですね。もちろん近隣の方に来てもらえるのもうれしいですが、「さとやま食堂に行きたくて、この辺には初めてきた」みたいな人が来てくれたら、地域のことも知ってもらえて、それがとてもうれしいです。
起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?
起業するとよく「自分の思った通りに時間が使える」みたいな話になりますが、正直思ってたほど自由にはならないんですよね。急な問い合わせが来たり、提出書類の締め切りがあったり、発注先の都合や休みがあったりと、相手があることなのでそうでもないんですよ。
ただ、私は9時から17時だけだと物足りない人なんです。一旦家に戻っても、また夜に出てきて何かしたり、22時に買い出しに行ったりしても、誰にも咎められず、変な時間でも、いっぱい働ける。要は、「したい無茶が、したいようにできる」自由があるなと(笑)
勤めていた頃は、「この書類は本当に必要?」「これは何の為にやるのか?」と腑に落ちないこともありましたが、今は「こっちの方がいいのでは?」と思ったら、自分の判断ですぐできるので、それはストレスがなくていいですね。
将来の展望はどのようにお考えですか?
ここでの活動が、周辺で増えていく休耕田を、次に繋げられる受け皿になれたらいいなと思っています。やはり、代々守ってきた土地を、誰でもいいから売る、任せるというのは不安があると思うので、谷川の里山の風景を持続可能なカタチで渡していく、その第一歩がさとやま食堂でありたいです。
自分だけではやりきれなくても、何かのご縁でご一緒できる農家さんが現れたり、何かの打開策が見つかるかもしれない。その為にも、まずはここを細く長く続けていきたい。色んな人が訪れてくれることで、この辺に住んでる人にも「この地域にそれだけの値打ちがある」と思っていただけるようになれば嬉しいですね。
鶏も飼いたいし、ヤギも飼いたいです(笑)
これから起業しようと思ってる人に対してのアドバイスをお願いします。
今思えば、昔から私の将来の夢って、ずっと「お母さん」みたいな感じでした。ご飯作ったり、家のことしたり。だから、別に起業して「会社を大きくしたい」よりも、家のことや村の用事を、落ち着いてできる生活がしたい。だから、自分の中ではすごい自然な流れでこうなったと感じています。
時給で働いてたら、3つ4つと掛け持ちしても、上限が見えてしまう。それなら、失敗するかもしれないけど、うまくいく可能性がある方を、自分でやってみたかったんです。今も、色んな失敗をしながら、一つずつクリアしていってるところです。
でも、自分にはできないことや苦手なことがどうしてもあります。そんなときは、人の力を借りた方がいいです。「わかりません。教えてください」と、頼れるところは素直に頼ることが、個人事業には必要なことだと感じています。
※この記事は2026年9月23日に取材した情報をもとに作成いたしました。
| 事業者名 | さとやま食堂 |
| 代表者名 | 藤本倫子 |
| 〒 | 669-3131 |
| 住所 | 兵庫県丹波市山南町谷川1623 |
| 営業日時 | 平日11時半~15時、土日祝9~17時(朝ご飯要予約) |
| 定休日 | 火・水(臨時休業はInstagramをご確認ください) |
| https://www.instagram.com/satoyama_shokudo/ | |
| ご予約 | お問合せも、以下のLINEからご連絡ください。 |
| LINE | https://line.me/R/ti/p/@847oiimu |