車に揺られながら田畑を通り抜け、木々が生い茂る場所へ入っていく。するとそこにはテラスのある素敵なログハウスがあった。丹波市柏原町にあるレストラン「BBQ＆Burger BP」。木のぬくもりが感じられる店内のカウンターから「こんにちは」と笑顔で出迎えてくれたのが、今回取材する大木敦子さんだ。彼女は7年前、夫の生まれ故郷である丹波市に大阪から家族で移住した。今はBBQ＆Burger BPにて接客から調理、得意のお菓子づくりまであらゆることを精力的にこなす大木さんだが、もともと主婦として子育てをしながら暮らしていたという。そんな彼女の丹波市での生活や子育て、働くことになったきっかけや丹波市での仕事についてお伺いした。

 

 

 

子育ては絶対田舎で！都会暮らしを止めて移住を決意

 

 

 

愛知県豊橋市の山の方で生まれ育ったという大木さん。調理の専門学校に進学するために大阪に出てきて、卒業後そのまま大阪で就職をした。

 

 

大阪のホテルで1年間、調理の仕事に携わったあと、ホテルでサービスの仕事に携わりました。学生時代に出会った彼と結婚。妊娠したことをきっかけに移住を決意しました。

 

 

 

 

もともと夫の出身地が丹波市だったが、結婚するまでは訪れたことがなかったという。それでも移住を決意したきっかけは何だったのか。

 

 

夫も私も、子育てをするなら田舎が良いと思っていたんです。私は豊橋市に戻ろうとは思っていなかったですし、夫は丹波市に戻りたいと言っていたので、意見の不一致もなくスムーズに決まりました。

 

 

丹波市に行くとなり初めて訪れたのは、市内にある白毫寺。九尺藤や紅葉など、季節の移り変わりがとても美しく彩るこのお寺にとても感動したことを覚えているという。それが彼女の丹波市生活の始まりだった。

 

 

 

 

周りに支えられ、そして周りを気にしなくていい。丹波市での子育て生活

 

 

 

丹波市生活が始まり最初の6年間は、子育てに追われていた。移住し、さらに2人の子どもを授かったので、毎日子育てに奮闘していた。

 

 

長男が軽度の知的障害なのですが、彼が癇癪を起こしても周りの人は温かい目で見守ってくれたり、声をかけたりしてくれます。都会では味わえないであろう、人々の温かさを実感しています。

 

 

 

 

田舎は人との距離が近く、とても心地よい。もともと大木さんは自ら挨拶をするタイプだが、散歩中の人が声をかけてくれたり、気にしてくれたり、挨拶をしたら話題を振ってくれたり。丹波市の人は本当に温かく、とても助かっていると話してくれた。

 

 

3人も子どもがいるので大声で泣いたり叫んだりと騒がしいのですが、近所の方に怒られたこともありません。周りを気にしなくて良いのも魅力ですね。

 

都会での子育ては近隣への配慮が不可欠となりのびのびと子育てができないのがネックだったが、田舎では家と家の距離もある程度あることや近所の人たちが寛容であるため、ストレスなく子育てができるそうだ。

型にはめず、子どもたちの個性をそのまま活かして子育てをしたかったという大木さん。そんな彼女の理想の子育てをするのにも、丹波市はぴったりだった。

 

 

型にはまりきれない子ってきっといると思うんです。うちの子どもたちも自由な感性を持っている。なので、将来困らず幸せに過ごせるように、丹波市で育てられたらと思います。

 

 

 

 

子どもたちが大好きな泥遊びや水遊びがすぐ近くでできるのも、自然が近くにある丹波市の魅力だ。こうして大変ながらも順調に子育てをしてきた彼女に、2019年の秋ある転機が訪れた。

 

 

 

 

 

 

夫の病気がきっかけで、マルシェに手づくり焼き菓子を出品

 

 

大木さんの夫が病気を患ってしまった。働ける時もあれば働けない時もあり、収入が不安定になってしまい彼女も稼がなければならない状態にまでなった。

 

 

とにかく稼がなくちゃという気持ちもありましたが、子育てをしながらなので内職を視野にいれていました。しかし、締切のある仕事が多く、子育てと両立するとなるとなかなか至難の業。そこで、自分でできる何かに挑戦してみようと思ったんです。

 

 

もともと何かを作るのが好きだった大木さんは、丹波篠山市で行われていたおさんぽマルシェで出店を始めた。

 

 

最初は編み物を販売していました。何度か出店した後、かぼちゃのケーキを販売したら評判が良くて。ケーキであれば、丹波市のおいしい食材を使ってできるのではないかと思い、野菜のケーキを作り始めたんです。

 

 

こうして、専門学校以来離れていたお菓子づくりを本格的に再開した大木さん。マルシェに参加したことがきっかけで、人脈もどんどんと広まったという。

 

 

 

 

もともと丹波市には良い人が多いと思っていましたが、マルシェに参加してから前向きで行動力のある人たちと出会うことができました。

 

 

多くの人に支えられつつマルシェで着々と力をつけていった彼女に、２回目の転機が訪れた。それが、今の職場に当たるBBQ＆Burger BPとの出会いだ。

 

 

 

自分のすべてを活かせるお店、BBQ＆Burger BPとの出会い

 

 

 

友人に誘われたのがきっかけで、BBQ＆Burger BPを訪れました。お店のSNSでの求人募集を見かけた時に「菓子・オードブルを作れる人、宴会やウェディングの対応ができる人」などが記載されており、自分だ！と運命を感じました。

 

募集要項に週末や夜に働ける人という記載もあり、子育て中の大木さんは平日の日中しか働けないため躊躇もした。しかし、大阪での就業経験やお菓子づくりの経験を活かせるのはここしかないと、意を決して尋ねてみたという。

 

 

 

伝えてみるって大事ですね。オーナーの花田さんに平日でお迎えの時間まで働きたい旨をご相談させていただいたのですが、快くオッケーしてくれて。今は焼き菓子のメニュー開発から関わらせてもらっています。

 

 

 

 

 

こうして2020年4月から、晴れてBBQ＆Burger BPの一員として働き始めた大木さん。今はここで自分がやりたいと思ったことを叶えさせてもらえていると笑顔で話した。

 

 

毎日が楽しくて仕方がないですね。働いているのがとっても楽しくて、素敵な出会いに感謝です。

 

 

 

目標は世界平和。身近な人から「幸せ」を広めたい

 

 

 

目標はありますかと訪ねたところ、少し考えた後に「世界平和かな？」と答えた大木さん。予想以上に大きな目標で驚いたが、やさしい笑顔でこう答えた。

 

 

世界平和って言ったら壮大な目標だと思われますが、食事に来た人が穏やかな気持ちになって帰ってくれるのも、世界平和の一つだと思っています。人ってイライラもするし、うまくいかないこともある。そんな時、おいしいものを食べて癒やされると家に帰った時には穏やかに過ごせる。そんなところから平和や幸せを作っていきたいですね。

 

 

 

 

 

 

自分だけではなく、周りの人にも幸せになってほしい。自分が作ったもので誰かが笑顔になったり癒やされたりできるように、愛情たっぷり込めて作っている。そんな料理やお菓子、おいしいに決まってるじゃないか！と言いたくなるくらい、おいしさに対する自信が伝わってきた。

 

 

私自身、幸せなお金持ちになりたいです。まだまだ先の話ですが、『このは』という屋号で活動しているので、いずれは自分の事業でも人を幸せにできればと思っています。ここで働くのが楽しすぎて、全然考えられていないんですけどね。

 

 

自分の好きなことをしながら好きな環境で好きな人たちと一緒に働く。こんな最高の環境が作り出せたのは大木さんの人に対する思いやり、そして何よりどんな状況でも前向きに行動し続けたからではないだろうか。

 

 

 

ベースが幸せな環境だから、何が起こっても乗り越えられる

 

 

 

大木さんの話を伺った時には、そんないろいろなことを抱えているんだと思ったが、彼女はそれを苦労だとは思っていない。むしろどんな逆境も、さらなる幸せに繋がる第一歩とすら考えているように感じられた。

 

 

今となっては主人の病気がきっかけでこんなにも楽しいことをさせてもらっているので、主人に感謝ですね。

 

 

そう、笑顔で答えた。「どんなことがあっても前向きに楽しむ！」そんなスタンスだからこそ、いろいろな出来事も乗り越えられているのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

もし丹波市に移住をご検討されている方がいたら、本当にいい場所なのでぜひ来てほしいです。集団生活が苦手な方や、型にはまりにくいタイプの方にも過ごしやすい場所。都会から週末だけ癒されにくるというのも、良いと思います。

 

 

少しでも移住をしたいと思った人は、ぜひ大木さんを訪ねていただきたい。彼女の作る愛情たっぷりのお菓子を食べながら、そして森林に囲まれながら彼女と話せば、きっと何か明るい兆しが見えてくるはずだ。