移住者インタビュー

Vol.51 / 2019.01.30

人生を整える。神戸との二拠点居住で得た自分達もお客様も豊かにする場所

桜井 基晴・厚子さん

地方への移住が国策として推進される中、「多拠点居住」も注目されるワードのひとつ。都市部で仕事をしたり、生活する時間も持ちながら地方でゆっくりと過ごす時間も持って・・。リゾート地や静かな山間に別荘を建てるようなものだけでなく、都市部と地方、両方で仕事をすることでお互いの仕事に良い影響を与える暮らし方についても考える人が多くなってきたように感じます。今回インタビューしてきたのは、2年前に丹波市内で家を買い、まさに2拠点で居住し、仕事をし、暮らしを形作っている桜井基晴さん・厚子さんご夫妻。都市部と地方の両方で暮らす良さやこれまでについて、伺ってきました。

 

 

購入した古民家で、リラクゼーションサロンを開業。

 

桜井さんご夫妻は15年前から神戸で「癒しの森 あおぞら」というリラクゼーションサロンを経営されています。ボディセラピストであり認定心理士の資格を持つ心理カウンセラーの基晴さん、同じくボディセラピストでヨガインストラクターでもある厚子さんは、約2年前に丹波市山南町で見つけた一軒家の古民家を購入し、毎週月〜水は丹波市に滞在し、リラクゼーションサロンやカウンセリング、ヨガと座禅会やハーブクラフトなどのイベントをされています。(※写真の中にあるカフェに関しては、もともと桜井さんのお客さんがやっていた出張カフェ「ちゃぶ台カフェ」さんに間貸しをしている様な形で運営されています。)

 

もともと、神戸でリラクゼーションサロンのお店をしていて、心と身体の健康についてヨガ・心理カウンセリング・非日常体験として日本各地でワークショップなどを通してお客様に提供する仕事をしていました。

日本各地を訪れる中で、田舎に拠点をもって自然環境の中でくつろぐという体験もいいんじゃないかということで古民家を持つことを計画し始めたのが丹波市に来ることになるきっかけでした。

 

 

 

最初はリラクゼーションの仕事を丹波市でやるために準備をしていたのですが、購入した家に元々カフェの機能があったのと、まわりのご近所さんとお話をしている中でカフェをやってほしいっていう話があって。

元々神戸のお客さんだった、美味しいスイーツを作って出張で「ちゃぶ台カフェ」というカフェをやっている方がいたので、そんな話をしたら、「やりたい」という話になったんです。私たちの神戸のお客さんの中にも、田舎には行きたいけどどこに行っていいかわからない、という人がいて。

購入した家では漆喰を自分で塗ったりDIYでつくっていったりして、カウンターなんかも自分で作ったりしたんです。こっちに来て思うのは、色んなことができるようになったってことですね。保存食作ったり、DIYしたり。

 

月一回で始めたカフェですが、最近は丹波市のお客さんも多くなり、地元のおばあちゃんたちも良く来てくれるのだそう。毎回30人近くのお客さんが来てくれるのだとか。

 

 

 

自然豊かな環境で過ごす時間が、自分たちもお客さんの心も整える。

 

今の2拠点居住生活をとても楽しんでおられるように見える桜井さん。特にどんなところが気に入ってるかについて、聞いてみました。

 

 

そうですね、朝ごはん食べる時かなあ。家の中に庭が見えるカウンターを作ったんですが、朝ごはんを食べてる時って音も静かで、ゆっくりとした時間を過ごしてると感じて幸せな気持ちになりますね。

神戸だとやっぱりすぐ仕事というのがあって、リラックスできていないんだなと感じたり、街中の騒音とか雑踏とかの中にずっといますので気が緩まないんですが、ここに来ると全身の力が抜けるような感じがするんです。

その中で自分のコーヒーを淹れて、自分で作った庭のデッキで朝食を食べて、というのがすごく気持ちを豊かにしてくれますね。

 

自然いっぱいの環境の家で豊かな時間を過ごして気持ちを整える。また、それ自体が桜井さんご自身のお仕事でもある、心のケアにも良い影響を与えているということをお話してくれました。

 

ここで座禅会をやったんですが、やっぱり静寂にひたることで自分の感覚が研ぎ澄まされる感覚があります。それをもってここでカウンセリングをやったり、神戸にカウンセリングをしに行ったりすることもできて。研ぎ澄ました感覚というのが保たれるんで、自分をもう一度ニュートラルに戻すのに非常に役立っていますね。

 

 

 

ご夫婦揃ってボディケアの道に。それぞれの経験について。

 

基晴さんは、大学を卒業して就職した職場の経験が今の仕事に繋がっているとお話してくれました。

 

元々、自分の中で完璧主義なところがあって。仕事をしていて「完璧にやろうやろう」としても、やっぱりなかなかそうならない所もありますよね。そんな自分の中で葛藤が大きくなってしまって。心が疲れてしまったんですね。

そこから、何とかしようと思って本とか読んだ時に心理学の本に出会って。(その本で紹介されていた話が)これ自分だと思って。カウンセリング・リラクゼーションの世界に足を踏み入れたきっかけなんです。

カウンセラー養成学校で学んだあと、カウンセラー兼講師として働くことになったのですが、そこでボディケアと出会ってボディケアをやっていきたいなと思うようになって。何年か修行して自分でお店を持ったのが15年前のことになります。

 

厚子さんはまた別のきっかけですが、基晴さんと同じくボディケアの道へと進んでいくことになります。

 

私は、バックパッカーで世界中をぐるぐる周ってたんです。元々私は大学生の時カナダに留学していて、家の事情で途中で帰ってきたのですが、その時に仕事を探していて入社したのがユダヤ人の会社だったんです。

で、ユダヤ人の方ってすごい旅行するんですね。それで旅の話を聞いてたら自分も興味もって出て行っちゃって。そこから、お金もなかったんで東南アジアから出て行って。ちょっと働いては旅に出る、というような経験をしました。

一回出ちゃうと2年くらい帰ってこない、っていうような。ですが、日本に帰ってきてる時に基晴さんに出会ったんです。就職先と嫁ぎ先が一緒に決まっちゃったみたいな(笑)

 

 

 

 

本格的なボディケアを学ぶため、タイへ。

 

基晴さんが面接で厚子さんの話を聞いた時に、タイでタイ式マッサージを習っていた経験が面白いと感じた基晴さん、厚子さんと一緒にタイに一ヶ月間本格的なマッサージを習いに行くことになります。

 

 

タイに一ヶ月マッサージ習いに行く?って聞いたら行くっていうので。タイのものすごいジャングルの中に、ラフ村という複数の部族がいる村があるんですが、そこで昔から脈々と受け継がれている「病気のケアとしてタイ式マッサージ」があるとを知ってたんです。

 

そこで習いたいと。街じゃなくて。それで、ジャングルに行ったんです。(笑)

 

タイに着いたら、チェンマイに行って、檻みたいなトラックに乗せられて(笑)道路がないので2時間ぐらい走ってジャングルに入ると、上半身裸の女の人とかが普通にいるようなところに(笑)小屋があって、高床式住居になってるんですが、床が竹で、その隙間から豚が見えるような(笑)

扉あるんですが竹の扉で、出てすぐの場所に鶏がいて、その鶏が朝4時に鳴くのが目覚まし代わりのような。ちょっと朝散歩に行ったら、ハイエナに追いかけられたりしたんですよ(笑)

 

 

 

なんだかすごい経験をされているなとこちらもたくさん笑わせて頂きました(笑)そして、そんな環境で学んだマッサージは、今のお店の根幹になっているようです。そこで学んだマッサージについて、他とどんな違いがあるかについてもお聞きしました。

 

やっぱり一番違うのは、自分を整える所から始めることだと思います。

朝は日の出の前の朝4時半くらいにジャングルの広場に集合するのですが、ヘッドライトつけてジャングルを歩いて。広場に出たら仏教みたいな説法を受けて、そのあと瞑想があるんですね。日が昇るまで気温5度のところで。目を閉じてたらそれが明るくなるんで瞑想が終わる合図ですね。2時間くらいやるのですが、すごい気持ちよかったです。

 

瞑想している間は、獣の声とか虫の声が聞こえるんですが、朝日が出てきて夜から朝に変わる瞬間、すべての音が止まるんです。シーンと「間」ができるんです。夜と朝の「間」みたいなのが。そこから鳥の声が聞こえてきて。

 

気温も5度から一気にあったかくなってきて、太陽の光ってこんなにあったかいのかと。そして瞑想が終わるとマッサージの勉強が始まります。

私たちが教えてもらったのは、世界各国から学びに来る人がいる「アソカナンダ先生」という方で、ドイツ人でスリランカで出家した人なんですけど、欧米の人たちにはその人がすごく有名なんですね。私もバックパッカーやってた時に、欧米の人からその人のタイ式マッサージをまとめた本を読ませてもらって、あ、絶対この人から学ぼうって思ったんです。

でも、私たちが習った3ヶ月後にガンで亡くなってしまって。日本人で生徒として習いに来たのは私たちだけだったみたいなんです。

 

 

人生を整える。これから丹波市でやっていきたいこと。

 

ここでやっていきたいのは「人生が整う」という場所にしたいということなんです。

つまり、「心と、気と、身体と、食べ物から整う」ようなことができたら、心が整ってくる。そして、そうやって整った自分がお客さんをセラピーをしてあげると、よりそのお客さんが整う。そうやってそのお客さんが整うと私もそれを受けて、身体に喜びを覚えて、自分もレベルアップしていくような感覚です。

 

今までのご経験と、お仕事と、丹波市の自然環境だからできること。その全てがすっと繋がったような気がしてとても良いなと感じさせられました。そんな桜井さん夫妻に、今後丹波市でやっていきたいと考えていることについても、お話を伺いました。

 

 

 

今、カウンセリングでお客さんがついてくれていて、全国からお客さんが来てくださるんですね。なので、丹波って日本の中心にあるから、エリアを限らずここに私たちのセラピーを必要としてくれていたり、共感してくれる色んな人を呼ぼうと思うのが今後の展望かな。それも日本に限らず、海外からも。

人の付き合いが、神戸にいた時はお客さんだけだったんですけど、ここではノーリミットでいこうって(笑)

 

 

 

 

丹波っていいものいっぱいあるじゃないですか?すごくいいものを作っていらっしゃるので神戸のお客さんに紹介したりすると、すごく気に入ってくださって。ものづくりを頑張っている人たちを海外の人たちにも紹介したいなと思ってるんです。

僕らだけ、じゃなくて地元の人たちを紹介したりね、薬草薬樹公園さんや板野さんの丹波ポークとか。丹波市山南町は薬草の一大産地だという話を伺ったので、ボディケアルームに薬草の足湯をつけたりしたんです。庭でも薬草を育てたりしているんですよ。

 

 

 

神戸のお客さんでも、一人だと何をしていいかわからない、一人だと行動できないという人もいて、そういう人をワークショップとかで巻き込んでいくと、その人の中に眠っている活力とかやる気が引き出されていくところを見れたりするので面白いですね。

カウンセリングを学んで、自分の心がわかったところで、もし仲間がいたり、もしサポートしてくれる人が一人でもいたら、もっともっと変わっていくと思うんです。カウンセリングしたら、はいさよなら、あなたの日常頑張ってね、で終わりじゃなく。

で、気づいたら一人ぼっちの人が集まってみんなが仲間になってるというのも、すごく素晴らしいなと思うんです。

 

 

丹波市に移住してくる方はその背景も考えも想いも本当に様々ではありますが、久々に「なんて面白い方達なんだ」というお話を聞くことができました。

過去になにを感じたか、それをどう変えたいと思ったか。

そしてそのためになにをしたか。

結果、それが仕事になっていて、好きで続けていきたいことになっていて、未来に楽しい想像をしている。全部すとんと繋がっているお二人を、とても「かっこいいな」と思いました。

 

そしてそれが丹波市の環境で叶えられていたり、また地域の方々も巻き込んで創られていることがとても印象的でした。もしご興味をお持ちでしたら、ぜひ桜井さん夫妻を訪ねてみてください。どんな人も、桜井さんご夫妻と、丹波市と、一緒に人生を整えていけそうだなと感じます。