移住者インタビュー

Vol.46 / 2018.07.31

丹波市屈指の人気店「そばんち」は、定年退職後はじめた社会に顔を出すための道具だった

佐藤勉さん

丹波市には、ゴールデンウィークになると京阪神の都市部からお越しになるお客さんで車が列を作る人気のそば屋さんがあります。「そばんち」の佐藤勉さんは定年退職後にそば屋を始め、自身のお店に止まらず「奥丹波そば街道」という名称でそば屋の横のつながりをつくり地域を盛り上げる仕掛けをしたり、趣味の自転車をイベントにして「TOUR DE TAMBA」を開催したりと丹波市を盛り上げる仕掛け人の一人です。

 

 

佐藤さんの生まれ育ちは福島県。入社した会社の転勤で様々な地域で仕事をしていました。定年退職と同時に丹波市で家を購入し、その家が今のそばんちになっています。

 

 

もともと、お仕事や趣味でそば打ちをされていたんでしょうか?そば屋をはじめたきっかけは?

 

ここのそば屋をやっているのは、定年退職後わたしが社会に顔を出すための道具としてはじめたんです。そのほかにも、そばそのものが面白く感じて。そば打ちを含めてそばを美味しくするとか、料理は色んな意味で面白い。そこに自分自身もハマったんです。趣味が高じてお店を始めたわけではなく、自分が定年退職後どうしていこうかと考えた結果、そば打ちがあると。そう思ったのがはじまりです。

 

 

「そばんち」は佐藤さんがそば打ちを自分で研究しながら作っていったお店。試行錯誤の過程を自分で記録し、それを「そばんち通信」として残していたり。日々の発見や今までの自分の考えを見返したりできる記録として大切にされています。

 

 

そばが好きだからそばをやろう、ではなく、定年があって何をやろう、その中の候補にそばがあった。どこで修行したわけでもないので、自分なりにそば打ちを、美味しいそばをどうやって作っていったらいいかを練り上げて、それを世の中に問うていったら通用したと。

 

 

 

 

店をはじめた当初から、近所のそば好きが来てそば研究会とかをつくっていたんですよ。その人たちの倶楽部活動みたいな感じで。だからその人たちと一緒にそば打ちやお店をつくり上げていった、というような感覚ですね。

 

 

 

そばんちさんには、今も多くの方がそば打ち体験や勉強をしに来られます。従業員さんも一風変わった雇用形態で、そばの修行をしながら仕事をする、というスタンスでそば打ちに関する仕事をどんどん任されてくスタイルです。

そばんちさんの求人記事はコチラ

 

 

実は、佐藤さんは現在「そばんち」さんをお弟子さんにほぼ任せて、別の場所で木・金・土曜日営業のそば屋をやったり、イベントを企画したりと様々な活動をされています。

 

今このお店の売上の中で、自分に来るお金はほとんどない。スタッフのためにここがあるみたいな感じだね(笑)わたしは車のガソリン代とか少し経費で使っているくらいで。ここの売上からわたしの生活費にいくことはない。年金で食ってる状態だから(笑)

 

 

 

自分でつくりあげて、軌道に乗ったお店をほとんど任せてしまうというのも凄いですね。(笑)後人の育成の場所みたいになってる感じでしょうか?

 

そうだね、全くその通りだと思う。この店だけの話でなく、丹波でそば屋をやる人を増やしたり、人を育てたりできたらと思っているのもあって、そば屋同士で連携して「そば街道まつり」というイベントをやったりもしてる。

 

 

 

お店の方でも、丹波地域でそば打ちをする人たちを増やしたいと自分のお店を経営している感覚で働けるような様々な仕組みを考えておられる佐藤さん。2018年の今年は、ご自身の趣味である自転車も、同じ趣味を持つ丹波の方々と一緒になって「TOUR DE TAMBA」というイベントにしてしまいました。

 

もともとは自転車好きな仲間と集まって、「丹波チャリ部」というのをつくっていたんだけど、メンバーが忙しくなってしまったり、自分の趣味で走る程度だったから色んな企画をやろうとか、そういう風な動きにはなれていなかったんだね。

 

 

そんな時に、トライアスロン等に参加したりしていた方からTOUR DE TAMBAをやりたい、と呼んでもらって。名前は何でもよくて、自転車好きの人たちが一つにまとまってくれたらいいなと思ってたので、じゃあ参加しよう、と思って。

 

 

 

 

 

 

最初はうちうちの活動だったんだけど、丹波市のシティプロモーションという事業でやろうという話になって、じゃあこのイベントをきっかけに丹波市にお客さんが来るようにするにはどうするか?等の考えが加わった。周りの人を巻き込むのが上手な人も数人入ってきて、一緒に企画を練って。

 

 

リンク:丹波サイクリング協会「第0回 ツール・ド・丹波2018」

 

 

メンバーの皆さんが協賛してくれる企業様を募ったりと関係する人たちも増え、大成功に終わったツール・ド・丹波2018。「今年は0回目なんだよね。来年が本番」と意気込んでおられます。

 

 

 

 

最後に佐藤さんに1つお伺いします。どんどん新しいことを生み出したり、仕掛けをつくっている佐藤さん。その原動力は?

 

そうだね、今までに無いものを生み出したい、という欲求は結構ある。例えばそばならそば、自転車なら自転車本来の良さを壊さない形で新しいことをする。そういったものをこれからも生み出していきたい。

 

 

 

様々な活動を通して、当初の目的だった「定年後の自分が、社会に顔を出すための接点をつくる」という佐藤さんの目的は達せられているように感じます。その結果、丹波市の地域自体が元気になったり、新しい企画が生まれたりと好循環が生まれ、更には次を担う人材の育成まで取り組まれているとのこと。佐藤さんのように、仕事と遊びと地域コミュニティでの役割をバランスよく楽しんでおられる方こそ、地域を活性していく人になり得るんだなとお話を聞いていて感じました。