移住者インタビュー

Vol.34 / 2017.11.06

地域との繋がりと古民家暮らしを求めて

地域おこし協力隊・慎 淑恵さん

2017年・2018年に引き続き、丹波市が実施している「お試しテレワーク」企画で来丹された、東京在住のライターFujico氏。普段、東京に住んでいる方にとって、丹波市の人たちの暮らしはどんな風に映るのか。
この記事は、彼女が丹波市での滞在期間中に出会い、交流された方へのインタビューをまとめたものです。
丹波市に興味がある方はもちろんのこと、丹波市に住む方々も楽しみに見ていただければと思います。

今の場所から住まいを変え、より良い暮らしをしたい。そんな夢を叶えるために、丹波市に住まう6人の移住者に会いに、筆者は東京からはるばる丹波にやってきた。今回インタビューする移住者は、古民家を求め移住を決め、今は丹波市住まいづくり課で地域おこし協力隊として働く慎 淑恵さんだ。

 

古民家が大好き!そう、キラキラした笑顔で話してくれた慎さん。丹波市への移住も、兵庫県には数多くの古民家があるのが理由の一つだそうだ。古民家をリノベーションというと最近の流行りのように聞こえるが、慎さんの古民家への愛はそんなものでは語りつくせない。

 

 

もともと昔から古民家が好きな慎さんは、大阪市内にいた時も建築設計を行なっていた。その後、より木工について勉強したいという意欲が湧き、飛騨高山で木工の学校に入学。そして木の椅子を製造する会社に就職したきっかけで、徳島に移住し9年間そこで過ごした。大好きなことを仕事にし、それを追求していく慎さんだが、生まれ育った大阪の近くで定住したいという思いが生まれ始め、「自分にとっての幸せな暮らし」を追求した結果、丹波への移住が決まった。

 

 

地域をより知りたいという思いで、地域おこし協力隊の道を選びました。

 

 

 

 

木の椅子を製造する会社に勤め、徳島で9年間を過ごした慎さん。その時は仕事をするために移住したため、特に地域との関わりはなく、人間関係も主に仕事関連だった。しかし今回の目的は定住。より地域のことを知りたい、地域の人と関わりたいと思い、地域おこし協力隊に応募した。

 

 

自分の得意を活かし、地域に還元できる仕事です。

 

 

得意の住まいの知識を活かせる丹波市役所住まいづくり課に、地域おこし協力隊として所属。ここでは空き家バンクの運営を行なっている。空き家バンクでは、空き家の所有者と丹波に住みたいという人々を繋げるお手伝いをしている。移住と一言で言っても、家を購入するのか賃貸なのか、リノベーションできるかなど状況は千差万別。さまざまな条件を持つ家と移住希望者の希望を合致させるのが、慎さんの仕事でもある。

 

 

 

 

 

何より古民家が好きで移住して来た慎さんは、今地域に関わりを持ち、かつ古民家に関する仕事ができ、とても充実した生活を送っているという。

 

 

 


慎さんが日々更新している空き家バンクの情報。
丹波市の住まいの情報を知りたい方は 住まいるバンク へ

※写真の物件は記事制作時のもので、物件の売買が成約している場合は住まいるバンクに掲載されておりませんのでご注意ください。

 

 

移住する時は大変でした。地域おこし協力隊として就職することが決まってから、1ヶ月後には丹波に移住しなければならないという状態。古民家に住みたかったのですが家を探す時間がなく、住まいづくり課の人々に協力してもらい、仮住まいを見つけました。なんと今はあるおばあちゃんの家の離れを間借りしていて、キッチンやお風呂は共同。けど、とても居心地がよく、当分は住まわせてもらおうと思っています。

 

 

 

古民家を改修しリノベーションをして住むのが夢で丹波に移住することが第一の目的だったが、思いもよらない方向に行った最初の移住生活。しかしそれは意外にも心地の良いものだったという。丹波市の中でも人口が少ないところだが、人との繋がりが強く、しかし移住者を快く受け入れてくれる。そんな人々の気さくさが、慎さんの故郷を思い出させてくれるそうだ。

 

 

 

近所の人と飲んだり、一緒に草刈りや掃除をしたり。都会などではなかなかできない経験が、ここでは自然と入ってくる。それが楽しくとても心地よいのだという。

 

 

古民家を買う夢はゆっくり叶えようと思います。今は丹波での生活をより知るための期間。地域おこし協力隊をしながら、自分も良い古民家に出会えれば嬉しいですね

 

 

 

地域おこし協力隊としての任務を終えた後は、夢の古民家を買いリノベーションをして、そこに工房を作りたいそうだ。工房で家具の修復を行なっていくのが今後の夢だという。丹波にある古民家には多くの家具もそのまま残されていて、行き場がないような状態。その家具を修復し、新しく生まれ変わらせ、次の持ち主を探す。捨てるという手段ではなく、循環させて行きたいそうだ。古いものを大切に、長く使っていこうという慎さんの優しさを垣間見ることができた。

 

 

今後、丹波市に移住をしたいという人に何か伝えたいことがあるかと聞いてみた。

 

そうですね。とにかく丹波は人が優しい。他の土地から来てもすぐに仲良くしてくれて、まるでずっとここにいたかのような安心感があります。子どもがいる人も、自分たちだけではなく地域の人みんなが見てくれるので、みんなで育てて行けると思います。いろんな良いところはありますが、ぜひ一度見に来て体験し、感じてみてほしいですね。

 

 

 

人の温かさを感じさせてくれる丹波暮らし。自分自身の理想の生活を追求し丹波まで移住し、それを着々と叶えつつ、居心地の良い暮らしをする。とても理想的だがそれを現実に変えられるのはきっと、丹波の昔ながらの温かな風習と、慎さんの地域に溶け込もうとする姿勢が、とても良い化学反応を起こしているのだと筆者は感じた。

丹波市に移住を希望される方のなかでも、古民家で暮らしたいという声はよく聞きます。長く田舎暮らしをしている人たちにとっては「寒いのに・・」「虫がたくさん入ってくる・・」などあまり価値を感じられていない事も多いのですが、日本らしさが残る古民家には、都市部で生まれ育った人たちが見てもどこか「なつかしい」と感じさせてくれる魅力があります。昔ながらの農業の営みと、地域のコミュニティが守ってきた古民家たち。慎さんのような、その両方を大事に思ってくれる人の手で、また100年先にも「日本らしい」家々と景観が守られていくのだろうなと、このインタビュー読んでまた感じさせられました。