移住者インタビュー

Vol.8 / 2015.11.26

自分たちで道を切り開く!挑戦しつづける生き方とは?

一宮祐輔さん

一宮さん、段宿ストックヤードにて
一宮祐輔さん

一宮祐輔さん

2015年4月に丹波に移住。
愛媛県松山市出身。大学まで地元の愛媛で過ごし、卒業後は大阪の広告制作会社にて勤務。 3年半務めた後に、学生時代にお世話になっていた方の紹介で、2015年4月よりNPO法人丹波グリーンパートナーに勤務。設立に携わっている。

田代春佳(以下、春):こんにちは!今日はよろしくお願いします!
一宮祐輔さん(以下、宮):いらっしゃい。ここが、僕たちが「ストックヤード」と呼んでいる場所です。ここ段宿ストックヤードには丹波市中の山々から木材が集められます。
春:丹波市中の木材!結構な量が集まりそうですね。
宮:今は1か所だけですが、これからストックヤードを増やしていく予定です。
春:そうなのですね。一宮さんはここでどういうお仕事をされていますか?
宮:現在はグリンパ(NPO法人丹波グリーンパートナーの愛称)の職員をしています。仕事内容は、地元住民の方や団体さんが山から伐採してくる木を買い取って、薪や木材、木工品として地域に循環させる仕組みづくりのサポートをしています。この「ストックヤード」は、その仕組みづくりの中でも「木の駅」(※1)という、地元住民さんや団体さんから材を引き取る窓口となる場所です(図1)。
丹波市木の駅プロジェクトは2015年9月19日にスタートしています。ここで材をトンあたり6300円で買い取らせていただくと同時に、その販路開拓をグリンパがしていきます。グリンパには、現在自分を含めて3人のメンバーがおり、今はまさにその仕組みづくりの真っ最中ですね。

図1 木材を6300円で買い取る丹波市木の駅プロジェクトの説明図

木材を出荷したい方に向けた入門講習会の様子

春:なるほど!仕組みづくりは大変そうですが、丹波の自然を活用したとても素敵な活動ですね。一宮さんにとって、お仕事の醍醐味はなんですか?
宮:初めてのことばかりで分からないことだらけですが、それがとても楽しいです。こちらで働きはじめた頃は、ここから見える山々すべてに「所有者」がいるということも知らなかったですし、例えばこの「薪を積む」という作業一つ取っても、とても深くて質が問われます。ただ単純に積めば良いというわけではなく、木の性質や空気の通り方、今後の運び方など考えることはたくさんあります。次に、ではこれを一体いくらで売るのか?という話になりますが、これも市場の値段、需要と共有のバランス、今後の丹波市がどうなってほしいかまで考えて、今決めているところです。

これから販売していく薪の試作。

手探りなことが多い中ではありますが、すべてを「任されている」という感覚があることもやりがいです。自分たちで道を切り開かないと進みません。なので「時間」という概念がなくなりました。大阪で働いていた頃は、「あとどれぐらい経ったら何時になるから帰れる!」という考えもありましたが、今は週末平日問わず動き回っています。自分たちでやっていかないと、何も進まないですしね。地域の人と関係を持つ場にも、仕事なのかプライベートなのかわかりませんが、きっと成果に繋がると思って積極的に参加しています。今も雇われの身ではありますが、一個人事業主という意識で働いていて、グリンパで問題があったら、それは自分の責任だと考えると、自然と一生懸命になれますし、きっと成功した時は一層嬉しいんじゃないかと、そう思っています。

2015年4月、NPO法人丹波グリンパ初めての通常総会。

「丹波市木の駅プロジェクト」本格始動当日!2015年9月19日。多くの出荷者さんが木材をストックヤードに運び込んでいる

春:そうなんですね。一宮さんが今のようなお仕事に辿り着くそもそもの経緯が知りたいです。できれば出身から…
宮:あ、そこからですね(笑)。生まれは愛媛県松山市で、大学まで実家で過ごしていました。昔から動物が好きということもあり、大学では畜産の勉強をしていました。その頃はひよこの行動学を主に研究していたのですが、畜産なので、ニワトリをいかに効率的に太らせて肉にするかっていう内容で(笑)。
春:動物が好きだったのに・・・(笑)。
宮:そう(笑)。もともとは動物を守りたいと思っていたこともあり、その頃から野生動物について本格的に学ぼうと、知り合いを頼って「兵庫県森林動物研究センター」(丹波市青垣町)に、「下働きでも良いので学ばせてもらえませんか?」と思い切って連絡しました。
春:おぉ。すごい行動力。求人があったというわけではないですね?
宮:はい。行ってみると、本当にいろんなことに挑戦させて下さいました。3ヶ月半だけでしたが、ニホンザルの個体群調査、ニホンジカやイノシシの個体数推定、アライグマの解剖などをお手伝いさせてもらいました。とても良い経験になりました。ですが、いろんなことに興味がある自分はこの動物の研究という、専門特化した分野では食べていけないと思いました。
春:そうなのですか?でも自然に関するお仕事という面ではどこか今の活動とつながりがあるのかもしれませんね。
宮:その段階ではまだ「仕事」とは結びついてはいませんでした。
在学中には環境系のNPOの立ち上げもしていました。そのNPOでは直接動物に関わったわけではなく、環境問題に興味のある学生に対して情報交換の場づくりをしたり、スキルアップセミナーをしたりいろんな取り組みをしました。大学を卒業する時は、もっと広い社会を知りたいという思いから大阪の広告制作会社に新卒で入社しました。

丹波市内の山にて。木材の伐採後の搬出の様子を説明する一宮さん。

春:大阪の制作会社ですか!今とは全く環境が違いますね。
宮:そうですね。そこで3年半ほど、営業から企画、提案、制作のディレクション、納品管理までやらせてもらいました。でも、いつかは田舎で暮らしたいとも思っていたんですよ。そんな中で、自分の知人が何人か田舎に移住をして暮らしはじめたこともあり、自分も田舎暮らしを本格的に意識しはじめました。なので、3年半経った時に会社を辞めて、北は北海道、南は鹿児島まで、知人を頼りに日本中を回りました。そうしていたら、「どうやら一宮がプラプラしているらしい」という噂を聞きつけてくださったグリンパの関係者が、「話を聞くだけでいいから、来てみないか?」とお声をかけてくださったのです。そうして丹波に来たのが2015年の2月。本当にまっさらな状態からのスタートという感じでしたね。
春:丹波に来てから半年は経ちますね。これから力を入れて取り組みたいことは何ですか?
宮:「自分たちの森のことを自分たちで決めよう」という言葉が、僕はとても好きです。これは、現在グリンパで取り組んでいる「木の駅プロジェクト(※1)」の仕掛人である丹羽健司さんの言葉です。よく僕たちは「森づくりはまちづくりだ」と言っています。自分たちの活動を通して、自分たちのことは自分たちで決めていく、そんな「まちづくり」ができたらいいなと思っています。それが当面の僕たちの目標です。立ち上げたばかりのグリンパですが、いち早く事業を軌道に乗せたいですね。

丹波グリンパ事務所の前にて。左から、一宮さん、十倉さん、清水さん、島山さん。

丹波グリンパの看板。

春:お仕事と同時に、狩猟にも力を入れていきたいそうですが・・・?
宮:そうですね。先ほど野生動物の話もしたのですが、2014年11月に狩猟免許を取りました。畜産ではなく野生動物の肉を食べることは、その命をとった自分が最後まで責任を持っていただくことができます。なので「好き」と「殺す」というのは、実はとても近いことのように感じます。猟をすることで、自分の食べる肉は自分で用意できるようになれたらいいなと思います。
日本では、誰かに「何をしていますか?」って聞くと、職業を答える人が多いですよね。でもそれだけじゃなくて、 例えばお金は稼ぐことはできないけれど、自分が食べる肉を得るために猟をしていますとか、ライフスタイルで自己紹介ができる人になりたいですね。

一宮さん

春:最後に、これから丹波への移住を考えている人に一言お願いします!
宮:まずは、「自分がどういう生活をしたいのか?」をはっきり持つことだと思います。生活はいろんなパートの集まりだと思うんです。お金で稼ぐパート、お肉を獲るパート、他には野菜を採るパートやサイクリングや散歩をするパート、マンガを読むパート、いろんなパートで出来上がっています。その中でどれくらいの割合でお金を稼ぐお仕事をして、どれくらいの割合で他のことをするのか。どういうライフスタイルで、どこで何をして暮らしたいか。
自分もまだそれを見つけだそうとしている最中ですが、それが決まると移住を通して実現したいこともはっきりと見えてくるのではと思います。
春:素敵な生き方の軸ですね。それにしても、自分の知らない分野に毎回ほぼ裸の状態で飛び込んでいく一宮さん、丹波での暮らしを通してこれからもどんどん発展していくだろう一宮さんの考え方、生き方が、今後も楽しみです^^ありがとうございました!
※1 木の駅プロジェクト
森林所有者や里山の住民、協力者が、自分の手で木の駅に木を持ち込んで、お金や地域通貨に交換できる仕組み。

一宮さんの働く事務所付近の風景。建物が低く、空が清々しく広がっています。

 

NPO法人「丹波グリーンパートナー」
丹波グリーンパートナーFacebook
URL:https://www.facebook.com/tamba.greenpartner/木の駅プロジェクトについて
URL:http://kinoeki.grenpa.org/

 

interview / writing:田代春佳