移住者インタビュー

Vol.10 / 2015.12.21

農業で「有機の里いちじま」へ移住!丹波で生き方をつくる

渡部真平さん

渡部真平さん、家の横にある畑にて。

渡部真平さん

神戸市垂水区出身。大阪の大学で経営を学んだ後、農家としての道を進み始める。家族が丹波市市島町の生産者と繋がっていたことを一つの機に、「有機の里」と呼ばれる丹波市市島町へ移住。2015年時点で、農家歴7年目となる若手農家。

田代春佳(以下、春):渡部さんが丹波に来るまでの流れをお聞きしたいです。
渡:生まれは神戸の垂水区で、高校までは地元、その後は大阪の大学の経営学部に進みました。大学生活は本当に授業と空手しかやってなかったですし、その頃は農業を生業にしようとは考えてもいませんでした。
春:そうなのですね、なにか丹波にくるきっかけがあったのですか?
渡:大学で就職のことを考え始めたタイミングで、授業と空手しかやってこなかった自分を振り返って、「社会人になる前にもっといろいろ経験したい!」と思い、新聞を開いたら、神戸市の農業短期研修の募集が目にとまりました。実家が丹波市市島町の生産者さんからお野菜をとっていたことや、市島町への援農(※1)で小さい頃から農業と触れ合う機会に恵まれてたこともあり、そこに飛び込むハードルは低かった気がします。短期研修は1週間程で、農家さんを2軒ほど回ることができました。その時に、「職業としての農業って面白いかもしれない!」と思いました。

※1 援農・・・・農家ではない人が、農作業の手助けをすること。

春:それが、農業への第一歩ですね!ですが、学部は経営学部。農業は未知への挑戦でしたね?
渡:大学では当然農業に関する就職先はなかったです。ですが、なんと空手部の先輩のご実家が淡路島で農家をしており、相談をしたところ、「うちこいや」と言ってくれました。
春:素敵な先輩ですね!ちなみに、渡部さんがいきなり農業の道に行くと聞いて、ご両親は心配されなかったですか?
渡:親は心配してたかもしれないけど反対はしなかったです。「自分の人生だからやりたいことをやったらいい。そのかわりに、責任は全部自分にかかってくるよ」と言ってくれて。親の反対がなかったのは、ありがたかったですね。
春:素敵なご両親ですね。淡路島から始まった農家への道、それから丹波に行きつくまでの経緯を教えてください。
渡:淡路島では、「農家ってどんなん?」というところから学ばせてもらう中で、有機JASを持っている農家さんと知り合いました。その時に初めて、有機の世界を知りました。有機は、環境保全の面を考えても良いなと思い惹かれました。有機の畑で見る生物が違って驚いたことも理由です。有機だと殺虫剤や除草剤とか使わないから、土の中の生物性が違うんです。なにより、その時に知り合った農家さんが何を育てるか決める時、「これは自分で食べたいからつくろう!」と、とても楽しそうに農業をやっている姿が印象的で、自分も畑をもつ時には、「農薬とか使わず、自分でも食べたくなる野菜をつくろう」と思い、有機農業の道に進むことに決めました。それが、25歳の時でしたね。
春:そうなんですね、それで「有機の里」として知られている市島町へ?
渡:はい。小さい頃から市島町に来ていて繋がっていたこともあり、運よく「兵庫有機農業研究会」に参加することができました。それで2年間丹波で修行をすることになりました。
春:初めての有機農業、驚いたことなどありましたか?
渡:たくさんありますが、まずはそもそも畝を1畝1畝つくるのが驚きでした。農薬を使わないから、畑の一カ所でも病気になったら全てかかってしまうので、畝を分けることで病気の広がりを抑えます。当然ながら虫くいも多いし、乗り越えないといけないことが山ほどありました。でも、そうやって苦労して育てているからこそ、野菜に対して愛情をもてるようになりました。なので2009年、神戸にあるレストラン・愛農人(※2)でお野菜を出し始めた記憶はいまでも残っています。
※2 愛農人・・・http://slowlife-sk9.blog.so-net.ne.jp/2011-10-03
春:新しい道に飛び込んで行く渡部さん、すごい行動力ですね!丹波市で農業を始めて7年目(2015年現在)、移住をして農業をしてきたこれまでの道のりの中で、「これはやっといてよかったな」ということはありますか?
渡:とにかく「人との繋がり」を大切にしてきたことです。「有機の里」である以外にもう一つ丹波市を選んだ理由があって、それは「自分と同年代の若い農家がいる」ということでした。なので同年代の集まる会をはじめ、とにかくいろんな会に参加して情報交換の場に積極的に参加したことで、丹波市で農業をするにあたり相談できる人がたくさんできましたし、農地や家も見つけることができました。2014年に起こった「丹波市豪雨災害」の時も、Facebookを通してたくさんの人がボランティアに来てくれました。その時に空手部の先輩も来て、知り合いにもたくさん声をかけてくれました。家の被害も大きかったのですが、同町にある山名酒造の山名さんのご好意で、無事新しい家も見つかりました。本当に、人の繋がりの温かさのおかげだと思っています。

春:本当に本当にそうですね、何事も一生懸命取り組んできた渡部さんの背中をみてきたからこそ、みんな助けてくれるんでしょうね!・・・・・。繋がりと言えば突然ですが、今年、渡部さんはご結婚なされましたね。奥さんとはどこで出会ったのですか?
渡:2014年7月の丹波ハピネスマーケット(※3)で知り合いました。刺繍作家として活動している嫁さんは加古川出身で、出会ってからは自然な流れで結婚することになりました。
※3 丹波ハピネスマーケット・・・・http://happinessmarket.jp/
春:ご結婚されて変化はありますか?
渡:まずは生活のリズムが変わりましたね。今まで全部一人でやってきた家事のことも一緒にできたり、なにより一緒に映画を見たり・・・・・楽しいです!
春:本当に、いつも楽しそうですよね!!二人になって、これからのことについて話しますか?
渡:そうですね、とにかく新しいことをやってみたいと思ってます。奥さんは農業のことも詳しいので、これから一緒にできることがたくさんあるなと思います。
春:お互い支え合って成長できる仲、本当に素敵です。
そんな渡部さんから、丹波で農業を始めたいと思っている方に勧める「第一歩」をお聞かせ下さい!
渡:まずは一度来てみることだと思います。農作業体験なども開催しているので、それに参加するのが良いと思います。あとは現実的な面での準備として、スローライフだけではなくて、資金や計画性をもって生活することを考えておくのが良いと思います。事前の情報収集などとても大事です。僕自身足りなかったこともあり、反省も込めてのアドバイスです(笑)。あと大事なのは、「頼れる人を見つけること」。同年代の仲間をつくれるかどうかも、大事だと思います。最後、なかなか難しいのは家を見つけること。畑はわりとすぐ見つかるのですが、家は難しいです。「この子やったら大丈夫!」と思われるように、信頼を積み重ねることが大事だと思います。
春:顔と顔の見える関係が当たり前な田舎だからこそ、たくさん繋がりをつくって信頼を積み重ねることで、いろんな人が応援してくれるのが、丹波市の良いところですね。渡部さん、ありがとうございました!
渡:ありがとうございました!
interview / writing:田代春佳