移住者インタビュー

Vol.71 / 2020.09.24

大企業を辞め、自由の道へ。大志を抱く青年の地域との関わり方とは

清水 健矢さん

2017年から丹波市が実施している「お試しテレワーク」企画で丹波市の関係人口として毎年移住者のインタビューに来てくれる、東京在住のライターFujico氏。
普段、東京に住んでいる彼女の目には、丹波市の人たちの暮らしはどんな風に映るのか。
この記事は、彼女が丹波市での滞在期間中に出会い、交流された方へのインタビューをまとめたものです。
丹波市に興味がある方はもちろんのこと、丹波市に住む方々も楽しく見ていただければと思います。

※この記事は、緊急事態宣言が解除された6月後半に行ったインタビューです。東京から丹波市に来る際にFujico氏には新型コロナウイルス感染の可能性がないかチェック頂き、十分な感染予防実施の上移動とインタビューを行って頂きました。

町中よりも少し涼しく、流れる水の音がとても心地よい。ここは、丹波市の水分れ(みわかれ)公園にあるコーヒースタンド「水分れ茶屋 by Amhara Coffee Stand.」。ここのオーナーをしている清水 健矢さんは、地域おこし協力隊として丹波市に移住した。今では地域おこし協力隊に加え、コーヒースタンドのオーナー、ウェブデザイナーなど多方面で活躍をしている。将来は国際機関で働きたいという大きな夢を持つ青年は、「一度は外に出ても、またここに戻ってきたい」というほど丹波市に惚れ込んでいる。彼が愛する丹波市の良さや今後の丹波市との関わり方なども含め、移住生活についてお伺いした。

 

大企業を辞め、自由な道を選ぶ

 

大学を卒業し、誰もが知る大手通信会社に就職した清水さん。羨ましがられるような大手企業だったが、入社して4ヶ月目に潔く退社してしまった。

 

一人で自由にやりたかったんです。

 

 

 

 

清水さんは飄々と答えた。ちょうどタイミング良く大学時代の教授からエチオピアに行かないかと誘いを受け、会社を退職してわずか数日で旅立った。

 

大学時代は社会学を専攻し、社会の構造や見方などについて学びました。エチオピアに誘ってくれた先生は民族の研究をしており、研究のためエチオピアに3週間行くとのことで私もついて行きました。

 

エチオピアから帰国後は、ウェブデザインの勉強をしながらコーヒースタンドのポップアップ・ストアを始めた清水さん。ウェブデザインは社会人になってから、コーヒーは大学2年生のときから、すべて独学で学んだというから驚きだ。

 

社会学を勉強していたときに観光や地方創生についても学んでいました。大阪で生まれ育ち田舎を知らなかったので一度田舎に住みたいなと思っていたところ、丹波市が地域おこし協力隊の募集しているのを見つけたんです。

 

観光や地方創生の観点から、一度住んでみたかった田舎へ移住

 

地域おこし協力隊で募集していた分野は観光。これはまさしく自分が興味のある分野だと思い、すぐに応募したという。

 

丹波市には旅行で来たことはありました。住むイメージは出来ていなかったのですが、良い場所だった記憶があります。

 

こうして2019年7月に、丹波市へ移住した清水さん。地域おこし協力隊としてどんな仕事が待ち受けているのかと思いきや、手渡されたのは「真っ白なキャンパス」だった。

 

当初はDMOの設立を視野に入れていたのですが停滞しているため、自分で考えた方法で観光PRできることになりました。

 

ウェブサイト制作ができる清水さんは、観光分野に特化したホームページを開設。地元ライターが丹波市の観光情報と人を紹介するというコンセプトの「Tamba Style」を立ち上げた。

 

地域おこし協力隊として、色々な地域の事業者や自治体の人の協力を得るのも仕事です。このホームページは、丹波市の方々のご協力があったからこそ完成しました。

 

約100人の仲間とともに改装した「水分れ茶屋 by Amhara Coffee Stand.」をオープン

 

いつかコーヒーショップをしてみたいと思っていた清水さん。本州一低い分水嶺の水分れ公園にある空き家に目をつけていた。

 

その空き家は自治会の持ち物だったんですが、管理をされている自治会長に問い合わせてみたところ、使用していいということになり、ここでコーヒースタンドを開くことになりました。

 

水分れ公園は、水も緑も豊かで地域の人に愛されている場所。地域のコミュニティスペースのような場所になってほしいという願いも込めワークショップ形式で改修を行い、のべ100人もの地域の人々が参加した。

 

 

 

 

 

コーヒーが飲めるだけではなく、店の隣では畑もやっています。丹波市の農家さんに教えていただきながら、地域の人と一緒に作りました。

 

コーヒーかすを肥料にしたり間伐材を使った木材チップを畑に活用をしたりと、持続可能な環境も作り出している清水さん。

 

 

 

 

 

 

地域を盛り上げたいと賛同してくれる人たちが集まり作り上げたコーヒーショップ。決して一人で完成させることはできなかったと思います。

 

一緒に畑作りをしてくれた地域の人々が、野菜の成長を見にきてくれたりコーヒーを飲みに顔を出してくれたり…。地域の人にも愛されるコーヒーショップが誕生した。

 

多方面に活躍する清水さんの原動力

 

水分れ茶屋で今後やりたいことを聞いてみたところ、清水さんはマルシェだと答えた。

 

ハピネスマーケットや佐治市というマルシェが第2と第4週の週末に行われています。そこで、丹波市で毎週末イベントがある状態を作れば面白いのではないかと思い、1週目の週末にマルシェを開きたいと思っています。

 

10月の第一日曜日である10月4日には、第1回目のマルシェを開催する予定だという。さまざまな仕事をこなしつつも、とにかく行動が速い。彼のこの原動力はどこから湧いてくるのだろうか。

 

好奇心でしょうか。新しいものを開拓するのも好きですし、あとはもともと飽き性ということもあります(笑)。

飽き性だと言いつつも中途半端にはせず、どうやって完成したものが続けられるかも考えている。そんな彼だからこそ、地域の人は彼に協力するんだろうなと感じた。

 

また、自分を試したいと思っています。来年からも新しいことを始める予定です。

 

学びは止めない。大学院と丹波市の2拠点生活へ

 

地域おこし協力隊としての活動は、あと2年。清水さんは協力隊の活動を進めつつ、より知識を広げるため、来年から大学院に通う予定だ。

 

グローバル化による貧困の関係性などを学びたいので、国際協力についての研究をします。

将来は国際連合などの機関で働きたいという目標があり、大学院へ通いたいという清水さん。もし合格すれば来年からは寮と丹波市のニ拠点生活が始まる。水分れ茶屋は、自分が学校で戻れない日は手伝ってくれる人にお願いし、いつでも地域の人が集まれるようにするそうだ。

 

大学院卒業後は、一度丹波市を離れることになるかも知れません。しかし、また丹波市に戻りたいと思っています。ここは住み心地が良く良い人ばかり。生活自体も交通手段が電車から車になったくらいで、不便なことはありません。

 

長い目でみて、丹波市と関わっていきたい…。大きな夢を持つ青年にとって丹波市は、第2の実家のような祖父母の家のような。そんな安心して帰れる場所なのかもしれない。

 

大学時代から決めていた目標があって。自分の価値観で生きること、自由であること、そして幸せな人が一人でも多く増えること。その気持ちから、さまざまな活動を行っているんです。

 

 

 

自由でいたい、自分の価値観で生きたいだけではなく人の幸せをも願う清水さん。すでに地域の人が喜ぶことを作り上げ人を幸せにしている彼だから、きっと周りに愛されながら自分らしく進んでいくのだと思う。今後の彼の活躍がとても楽しみである。

いい意味で肩の力が抜けてるな、という印象の清水さん。編集部も今回はじめてお出会いしたのですが、常に笑顔を絶やさない好青年でした。ニコニコとした顔で柔らかい印象ですが、自分の手でやることはしっかりと進めつつ自分を磨いておられます。ある意味で地域に捉われ過ぎず、地域にとってプラスになることを進めていく。地域おこし協力隊として理想的な姿だなと感じる清水さんの活躍に今後も期待です。