移住者インタビュー

Vol.77 / 2021.09.28

土地に根付き、積み重ねていく。全国初の全日制で有機農業を学べる農業学校の立ち上げとこれから

木下 智代さん

こちらの記事は自身も移住者である丹波市移住定住相談窓口メンバーが行なった先輩移住者のインタビューです。新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮し、検温とマスク着用にてインタビューを行っておりますが、写真撮影時のみマスクをはずして撮影させて頂いています。

 

地方での仕事と言うと、農業が思い浮かぶ方は多いかもしれません。有機野菜の栽培をしたり、インターネットを使って直販をしたり、日常生活でも美味しいお野菜が食べられそう、なんて暮らしが想像できますよね。

本日は、就農を目指す社会人向けに全日制で有機農業を学べる農業学校 丹波市立「農(みのり)の学校」の立ち上げから関わり、自身も移住者として丹波市でご活躍されている株式会社マイファームの木下智代さんにお話を伺いに来ました。

 

全国初。全日制の有機農業学校に立ち上げから関わる

 

 

 

木下さんは丹波市の南側に位置する三田市のご出身です。丹波市での「農の学校」スタッフとして働くため、当時お住まいだった京都府から移住し3年目になります。初めて暮らす土地で新規事業の立ち上げから関わる木下さんに、まずはお仕事のお話を伺いました。

 

農の学校に関しては、やっとちょっと形ができてきたかな?と思っています。まだそれでも手探りなんですけど、1年目2年目で形も見えてきて、圃場の土づくりも進み、生産性が上がってきました。

丹波市の農家さんとは色々な方とお付き合いができてきて、大規模農家さん以外にも受講生と年齢が近く同じ目線でコミュニケーションを取れる方とも繋がりができてきました。土地に根ざしてやることなので、年月がかかる分やっと定着できてきたかな、という風にも思います。

 

会社としても、木下さんとしても初めて関わる丹波市での学校運営。丹波市の農家さん、行政、受講生や講師の方たちと一緒に一歩ずつ形をつくり前進していきます。

 

 

 

卒業後も丹波市に住んでいる人が多く、学校に質問や相談に来てくれた時に現役生を紹介したり、講義を卒業生に公開したりと、先輩後輩で交流する機会は積極的に作っています。

1期生の時は当然先輩という存在がいなかったのですが、3年積み重ねてきて卒業生が先輩として身近な相談相手になっているのが嬉しいですね。

 

 

 

運営開始から3年。学校自体が土地に根付き、歴史が積み重なっていく

 

 

次の受講生は4期生になる農の学校。田畑を耕し土を作るように、土地に根付いて積み重ねてきた実感を木下さんのお話から感じます。スタート時と最近の学校運営についても、どんな変化があったのか伺ってみました。

 

そうですね、近所の農家さんが教えてくれるようになったりして。農の学校では野菜がメインなのでお米専門ではないのですが、近所の農家さんがやってきて手伝ってくれたり、揃っていない機械を貸してくれたり、とても有難く思っています。

有機農業としてやっているので、学校も去年有機JASの認証をとりました。それもあって売り先も可能性が広がっているなと感じます。有機的管理を始めてから2年経たないと認証がとれないので、これも始めてすぐにはできなかったことですね。

 

 

 

農の学校がある丹波市市島地域は、「有機の里」として有機農家の育成や農家さん同士での研修を盛んに行なっている地域でもあります。近所の農家さんで、自身が散布した農薬が近隣の圃場に風で流されないよう圃場の真ん中の位置だけ農薬を使ったり、散布する場所を限定していたりする配慮に、木下さんはとてもびっくりされたようです。

 

 

 

 

お仕事もそうですが、移住しての暮らしも3年目。心境の変化や現在の暮らしについても伺いました。

 

 

三田市にいた頃、自分は田舎者だと思っていたんですけど、こっちに来て三田市ってめっちゃ都会だなと思ったんです(笑)地域の人との繋がりとか、ご近所づきあいはありましたが消防団とかも無かったですから。

丹波市に引っ越してきた当初、一軒家に住んでいて自治会にも入っていたんですが、自治会の集まりに行った時に衝撃を受けて(笑)月一の集まりで「あの木が崩れかかってるから何とかせなあかん」とかそういう話があって、自治(自分たちで治める)ということを体感しました。新興住宅地にいると分からなかったことですよね。

 

 

現在は丹波市で出会った旦那様と結婚され、マンションで暮らしている木下さん。ご自身は古民家に住んで庭で野菜をつくって…ということをしたいそうですが、旦那様はあまり興味がなく、話し合いをいつもしているのだとか。

 

 

丹波市全体の農業の未来を考えて。これからやっていきたいこと

 

3年間の土台づくりの後、木下さんとして今後チャレンジしていきたいことについても、お話を伺いました。

 

丹波市立の学校として丹波市全体の農業の底上げになるようなことをやっていきたいです。学校で学ぶ1年間だけだと経験値も少ないし、ここは学校であってプロの現場ではないので、一旦雇用就農して独立の道を探りたいという方も一定数いらっしゃいます。雇用先の候補を増やすためにも、卒業生の先輩が雇用先として受け入れて、そこからステップアップして独立する人が出てくる、そんな循環ができたらいいなと思っています。

マイファームでは各都道府県がやっている経営塾の運営事業なども行っているので、そうしたノウハウも活かしていきたいです。

 

 

 

高齢で辞めていく農家さんも今後増えてくると思うのですが、第三者継承という選択肢があってもいいですよね。新規就農って耕作放棄地や悪い条件の農地から始めないといけなかったり、機械とか道具も全部揃えなきゃいけなかったりする。そういうところと上手くマッチングして最初からある程度揃った状態でスタートできるようなサポートもしたいなって思いますね。

 

 

 

木下さんが働く「農の学校」では、有機農業を実践的に学び移住と共に就農を目指す環境が整っています。市立の学校として様々な市のサポートも受けられますし、いきなり農業の世界に飛び込むのではなく指針を見つけられる場所になっていると感じました。有機JAS認証も取得し、さらに内容の濃いものになっていると感じる農の学校。木下さんの想いを感じるインタビューでした。今後新規就農を考えていらっしゃる方は、ぜひ一度お問い合わせをしてみてください。

 

農の学校 WEBサイト

スタッフも学校がスタートする前に一度お出会いした事がある木下さん。約3年ぶりにお会いして、しっかりと土地に根付いた学校になっている様子が印象的でした。地方で、自然相手のお仕事であるからこそ、じっくりと根を張り土台を作っていく事の大切さを感じます。農業をする上でも、地方で暮らす上でも、素敵な考え方だなと思いました。