蘆田真博さん~祖父との思い出が詰まった家で始めた、海外との交流拠点を夢見る農家民宿~
移住前はどんな暮らしをされてましたか?
僕は生まれ育ちが奈良県大和高田市で、以前から宿をやりたくてノウハウの勉強がてら、大阪のゲストハウスで働かせてもらっていました。そこは客層として海外の人がメインで、自分もやる時は海外の人をメインにしたいなと考えていました。
当初の理想は奈良でやりたかったんですが、地域柄夜は21時を過ぎたら真っ暗になってしまうし、夜は大阪や京都の方が遊べるしっていうので、奈良には遊びにはくるけど宿泊はされないから難しい、ということが3年間働いてた中で見えてしまったんですね。
移住した経緯を教えてください
ゲストハウス勤務の終盤で、日本人のおもしろい方々と沢山お会いして、『お客さんは日本人もいいな』って思えてきて。海外の人も初回はどうしても都会の方へいきますけど、2,3回目は地方へ足を運ぶ人も多くて。それなら、日本の自然を知ってもらう為に、地方で宿をやるのもいいかなと。
そんなことを思い始めたタイミングで、兄から丹波市の祖父の家が空き家になっていることを聞いたんです。30歳までに何かしたいという思いもあって、2019年に新年会イベントが丹波市であって、それにきたのが最初で。それから人の流れを調べ始める為にちょくちょく来るようになって、30歳目前の2019年5月に丹波市へ移住しました。
今住んでいる祖父の家は、祖父が人生の終盤に施設に入っていたこともあって10年くらい空き家になってたんですね。小さい時から学校の部活が始まるまでの間、毎年奈良から丹波市へ父と遊びにきていて、かなり思い入れがあったんです。
丹波市での暮らしはいかがですか?
地域との関係は、祖父のおかげで入りやすかったですね。小さい時から、この辺の人にはよくしてもらってた印象がありましたので、生活していけるイメージはありました。
他にもコーヒー好きが集まるイベントとか、フットサルやバスケットとかそういったイベントも結構あって、僕らにとっては有難いです。最近は仲良くしてもらってる家族同士でキャンプいったりとか。楽しくやらせてもらってます。
以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?
実家のある大和高田市と比べたらやはり相当不便になりましたね。丹波市に引っ越す直前の半年は大阪に妻と一緒に住んでいたんですが、大阪とのギャップもすごかったです。
車ばかりの生活で、お店も少ないし。どこへいくにも車が必要で、コンビニまでも歩いていけない、ガソリン代も結構かかる。その辺が結構苦痛でしたね、一年目は特に。
なぜ宿泊業を始めようと思ったんでしょう?
学生の頃から海外によく行っていて、ホテルではなくゲストハウスに宿泊してたんですね。そこでの出会いが楽しくて、自分もやってみたくなったんです。なので元々はゲストハウス、ホステルみたいにしたくて、当初はゲストハウスだと謳っていたんですが、コロナウイルスの影響で一組限定の農家民宿に切り替えました。
形式的に農家民宿にしたのは、旅館等に比べて規制も少なく、初期投資がほとんどなくて済むことと、農家民宿でもゲストハウスと謳えたからですね。
丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?
やっぱり宿をやろうと思っていたので、どれくらい観光客がいてどういうニーズがあるのか、市内にはどういう施設があるのか等、丹波市は見えづらくて。色々話を聞かせてもらいに行きましたね。
あとは雪ですね。降るのは知っていたから、冬場は宿をしない想定だったので、宿以外に何かしないといけないかもと考えていました。やっぱり、雪の中きてもらう途中に事故されることを懸念してました。今年からHINEMOSという屋号で始めた、ピザのキッチンカーも同様に冬はやらない予定です。
当初の資金繰りはどうされましたか?
貯金してましたね、全部自己資金です。幸い、宿もあまり手をかけずに済む程度で、大きなものは水回りと畳くらいだったので助かりました。
起業のための準備はどんなことをしましたか?
前職で得たノウハウや経験が、ターゲットがごっそり変わったことで全部活きたわけでもないですが、需要も調べて、観光スポットや飲食店もひとしきり回って、丹波市のことをちゃんと知るために動いてました。
昔遊びに来てた時は自分で運転できる年齢ではなく、連れてってもらった場所といえばほんとゆめタウンくらいだったので、ひとしきり調べ直しましたね。
起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?
ほとんど自分で調べました。宿に関しては前職、手続きは兄が士業なので全部手順を教わって。途中から丹波市商工会にもいって、職員さんから観光とかについても教えてもらいました。
開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?
ほぼコロナ禍からのスタートで通常を味わってない状態ですが、一日一組限定にしたのがうまくいきました。利用されるのは家族連れがほとんどで、リピートしてくださる方も多いです。僕自身、子どもも好きなので、客層が合ってるのかなと。
今年からスタートしたキッチンカーは、当初宿でピザづくり体験していて、それから『みわかれマルシェに出してみないか』と誘われて。やってみたら好評で。将来的には飲食もやってみたかったので、去年の冬から本格的に検討し始めたのが経緯です。
店舗ではなくキッチンカーにしたのは、宿もやりたかったからですね。「ピザはやるなら薪でやりたい」と思って探していたら、SNSでたまたま繋がった人が、キッチンカーを辞めたばかりで見にいって、中身が8割方揃っていたので即決で買いました。
キッチンカーの外装をマットな黒に、内装を木目にとDIYで改装しました。これは完全に立って作業できるから案外楽ですね。
起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?
お店同士の繋がりは、ただの移住ではなく、はるりで起業したから得られたものだなと思いますね。宿で得られる繋がりといえば、「年末年始に実家に帰ってきたけど寝るところがないから」と、地域の人もうちを利用してくれたりします。こうしたご縁はうれしいし、楽しいです。
ただ、やっぱり思ったよりも雪が多く、冬の期間も長くて。あと、当初キッチンカーであちこちいく予定だったんですが、行く先々で保健所の許可がいることを知らなくて。この辺は事前の勉強、確認不足でした。
将来の展望はどのようにお考えですか?
今、課題になっているのは宿とキッチンカーの両立で、コロナ禍の影響もあるんですが今年の春からキッチンカーが収入のメインになっている状況です。夏の長期休暇も宿の問い合わせがあったんですが断らざるをえなくて申し訳なかったなと。来年からはどっちかに人を入れたりして、両立させていきたいところです。
宿の理想は、当初からの願いであるゲストハウスなんです。人との出会いや交流場所に転換して、海外の人も交流できるようになっていくのが一旦の目標ですね。
起業を考えている人へのアドバイスをお願いします
宿は、個人的には市内にもっとあってもいいなと思っています。一日で丹波市を見てまわるのは広すぎて難しいし、観光客数に対して宿泊者数も少ない。ただ、知られていないだけかもしれないので、丹波市のことを知ってもらえるよう、自分たちで発信していくことは必要だと思いますね。
キッチンカーは、ないものをするのが一番ですね。ピザはこの辺りではうちが一番最初でしたし、二番煎じならやってなかったと思います。あと、僕もそうでしたが、全国巡りたいなら事前に調べておかれるのがいいと思いますね。
※この記事は2022年10月20日に取材した情報をもとに作成いたしました。
事業者名 | 農家民宿はるり |
代表者名 | 蘆田真博 |
〒 | 669-3803 |
所在地 | 兵庫県丹波市青垣町西芦田1013-1 |
電話番号 | 0795-88-5515 |
webサイト | https://noukaminsyuku-haruri.com/ |