【起業インタビュー】129 Bakery

持留恵さん~のどかな里山で体にいいパンを未来へ伝えていく~

Uターン前はどんな暮らしをされてましたか?

高校卒業して、神戸学院大学へ進学した時に明石市で一人暮らししてました。

食べることが好きで、薬じゃなくて食べ物で人の体の調子がよくなるのがいいなと思って栄養学を勉強してました。

在学中にカナダへホームステイしにいったんですが、あまり英語が話せないまま帰国したので、「もっと喋りたかったなあ」と思って英会話教室に通ったりもしてました。

大学卒業後は、都会もそんなに好きじゃないし、地元に仲良い友達もいるしで丹波市へすぐ帰りました。

都会で働くのは自分にとってあまり魅力的ではなかったんです。

以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?

明石市の方が都会でバスとかも沢山走ってましたが、丹波市は親も住んでるし、送ってもらえてたし、特別不便さを感じることはなかったですね。

元々住み慣れてるのもあるし。

仕事も、経験として就活したりもしてたんですが、「私は田舎で就職するんだ」って思ってたから、都会の会社には興味湧かなかったです。

「車と就職先見つけな」っていう焦りはありましたけど。なんせ一人っ子で、マイペースなもので(笑)

Uターンされてから起業までの経緯を教えてください

卒業後は、まず最初に丹波市の老人ホームで2年間ほど働いてました。ほぼ調理師みたいな感じで、たまに栄養士として献立考えたり。

そこで、これから先のことを考えてると臨床が大事ということで病院で働くことを勧められて、旧柏原病院で6,7年働きました。

30歳目前で、やっぱり英語がうまく話せないことがネックになっていたことと、友達がオーストラリアに行ってるのを聞いて。

「やっぱり英語環境に身をおかなあかん」と思いたって、病院に相談したら『行っておいで』と言ってくれたので、オーストラリアにワーキングホリデーの制度で行きました。

ワーキングホリデーは30歳までなのでギリギリ。

昔はコーヒーが苦手でしたけど、オーストラリアのカフェで働いてる時にかっこいい女性のバリスタがいて、「ラテアートいいな」「コーヒーって面白いな」ってのめり込んでいって。バリスタを目指そうと思って。

帰国後、まだ「自分バリスタです」っていう自信がなかったから、丹波市でコーヒー学べるところないかなって探してたら、友達に柏原地域のcafe ma-noを教えてもらってすぐ行って。

カプチーノ飲んでみたら美味しかったので、『働かせてください』ってお願いして。

それから6,7年程働きまして、2019年5月30日に開業、ですね。

なぜパン屋を始めようと思ったんでしょう?

cafe ma-noで働いてる時にパンを焼くようになって、HIYORI BROTの塚本久美さんらと一緒にパン祭り等のイベントで焼くようになって。

パンの勉強がしたくて宝塚に月一で見習いにいったり、東京に研修いったりしてるうちに、コーヒーよりもパンにのめり込んでいった感じですね。

当初は『パン屋には絶対ならん』と皆に言ってたんですけど、cafe ma-noを辞めて、一旦長い休養を取っていた時に、『次はいつパン作るんですか』と言われたこととか、考えていくと、やっぱり声に応えたい、届けたいという気持ちが沸いてきて、パン屋しようかなと。

丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?

まあ、とにかくお客さんが来てくれるか心配でしたね。この辺りは草むしりしてる時とかものすごい静かで、鳥のさえずりが聞こえるくらい日中誰も歩いてないし。

材料の仕入れでも、問屋さんから『月10万円以上の売上がないと取引できない』って言われてた事も不安でした。

あとは、改修工事が期日までにできるんかなとか、資金足りるんかなとか、そういうのが結構心配でしたね。

当初の資金繰りはどうされましたか?

資金はずっと貯めてました。なので今まで借金なしの自己資金です。

開業して割とすぐに冷蔵庫が壊れてびっくりしましたが、その後も貯めてから買えてなんとかなりました。

起業のための準備はどんなことをしましたか?

色んな店舗の厨房を見せてもらいましたね、厨房機器の配置とか、動線を考えるのに。あちこちパン屋巡りしてパンを食べたり、本場のフランスにも行きました。

店にどんな方に来て欲しいかペルソナを考えたり、1日の売り上げを考えたりしながら自分の出来る方法を模索しました。

起業をする上でなぜ丹波市を選んだんですか?

他の地域も検討してましたけど、「やっぱり近場がええな」って思って。

以前の職場で繋がった知り合いとか、一時生産者の人とか、繋がりが沢山あるのは丹波市で、仕入れの事なんかも考えても「生産者と近いのはでかいな」と考えた結果ですね。

あと、パン屋やろうと思った時にちょうどタイミングよく、実家横の家を貸してた人が退居されて空いて。

車庫がちょうどいい具合の広さやったから、母に相談して、使っていいとなったのも大きかったです。

起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?

起業に関してはもう手あたり次第、あちこち知り合いに相談してました。実際にお店されてる方たちを中心に。

129 Bakeryの由来は何でしょう?

祖父が以前柏原地域で一福亭っていう寿司屋をしてた事と、『読み方がわからない屋号にしていると逆にそれがお客さんとの会話になるから』っていう話を知り合いから聞いていて、これやと。その案をいただきました。

開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?

開業初日、『オープンします』って告知を知り合いがSNSで沢山シェアしてくれたこともあってもうすごいお客さんきてくれて。

「ここでも来てくれるんや」って思いましたね。赤字でもないし、スタッフも増えて、楽しくやらせてもらっています。

ちょっと余裕ができた頃から焼き菓子も始めて。パンは焼ける量がしれてるし、お菓子は保存がきくからって理由で。たまにスタッフが焼いてくれたりもします。

最近はおにぎりも作り始めました。おにぎりはパン屋の次にやりたい事で、昔からおにぎりが好きで丹波市には美味しいお米を作る人がいるから、絶対流行ると思っているんですよね。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

パンで喜んでくれることもそうですが、「パン屋してなかったら出会えなかったやろな」っていう出会いですね。

同級生とか母の知り合いも、こうしたきっかけでもないと会わなかったでしょうし。あとは、自分の時間を自由に使えるから楽。

嫌なこともせなあかん時がありますけど、自分の決めたことなのでやらなあかんし、そこまでじゃないし。

よくなかったのは、十分寝れないのがきつい。それだけ(笑)

月曜は午前中買い出し、昼から仕込み。火曜はクロワッサンの折り込み。水曜は仕込み、20:30就寝。

木曜~土曜は大体1:30に起きてパン仕込んで焼いて、10時オープン、18時まで片付けやら仕込みして、20:30就寝。

日曜は丸一日休みか、食パンとお菓子焼いたりしないといけない時があったり。

そんな感じなので、水木金の睡眠時間の確保が出来たらいいなと思いますね。

将来の展望はどのようにお考えですか?

店舗の一画に和室があるので、カフェするか誰かに貸すか、子どもの憩いの場にするか等、活用を検討してるところです。おにぎり屋でもいいかもしれないですけど。

それと以前の職場で自分が応援してもらったみたいに、ここで働いてくれているスタッフが独立できるようになればいいなと思いますね。

あとは、寝たい(笑)

起業を考えている人へのアドバイスをお願いします

とりあえず、「やってみたらいいんじゃない?」って思いますね。自分もやってみてわかったことがいっぱいあるし。

自分も雇う側になって、過去に以前働いてた先のオーナーとかにたてついてましたけど、どの分際で言ってたのかなと(笑)身に染みたものがあります。

飲食関係での起業を考えるなら、もし未経験ならまず修行はした方がいいかなと。中に入ってみて、何がどう大変か、知識としてではなく経験として知っておくのが大事かなと。

後はコミュニケーションというか、知り合いを増やすのが大事ですね。移住者ならなおさら。

自分も知り合いに随分助けてもらいましたし、やっぱり人との繋がりが何より大切かなと思います。

 

※この記事は2023年2月20日に取材した情報をもとに作成いたしました。

事業者名  129 Bakery
代表者名  持留恵
 669-3141
所在地  兵庫県丹波市山南町岩屋450
instagram  https://www.instagram.com/129_bakery/