【起業インタビュー】FLOPPY BURGER HOUSE

池内亮太さん・晴香さんご夫婦~脱サラ後、10年以上食べ歩いてきたハンバーガーで起業したIターン夫婦~

移住した経緯を教えてください

(亮太さん)
移住前は兵庫県川西市に住んでいて、僕は製薬メーカー、妻は宝飾業界でサラリーマンをしてました。「いつかハンバーガー屋がやりたい」ということで、物件とか探してたんですけど、会社員からいきなり飲食店やるのもやっぱり不安があって。

その時、ちょうど丹波市でハンバーガー屋をされている方が「開業相談受けますよ」というネット記事をあげているのを見つけて伺ったんです。それで『街中はお金がかかるし、田舎の方に目を向けたらどうか』という案を頂いて、丹波市以外の近隣の市町村も色々見た結果、ここの物件がよかったんで丹波市に決めました。物件を決めてから引っ越しまでに工事や準備は進めていて、移住してきたのは2022年9月頃ですね。

なぜハンバーガー屋を始めようと思ったんでしょう?

(亮太さん)
僕がハンバーガーをもう12年くらい食べ歩きしてきたんですけど、「10年以上続けてることってなかなか人生においてないよなあ」と思って。当然好きなのもあるし、「これはなんかあるな」と運命を感じて、「お店をやるならハンバーガー屋さん」と迷いはなかったですね。

製薬メーカーはしっかりした会社で待遇もよかったんですけど、僕自身が会社で働くということに合わなかったんです。今後の生き方を考えたときに、結構妻には背中を押してもらいました。『人生一回だけやから、好きな事やったら』と。

(晴香さん)
夫は付き合った時からもうハンバーガー好きで、ずっと二人でハンバーガーを食べ歩いてたんです。それでふわっと『ハンバーガー屋やるんやったらどうする?』みたいな、最初冗談かと思ってたんですけど、後々結婚してからほんまやったんやなと(笑)

私もずっとサラリーマンで働くことを疑問視していて、夫の夢にタダ乗りさせてもらったところはあります。まだ30代やし、もし失敗したとしても、体力的に定年後失敗するのか、今失敗するのかだと全然ちゃうかなと思って。

以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?

(亮太さん)
仕事面は、水木が休みなので、生活習慣が変わりましたね。友人達と休日の都合が合わなくなったり、逆に平日休みはどこ行っても大体空いてて快適だったり。あと、今は通勤時間0分なので、通勤時間を考えなくていいのは楽ですね。あとは電車に乗らなくなった(笑)

(晴香さん)
夫は以前から車に乗ってて通勤もしてたんですが、私はペーパードライバーだったので、こっちに来ることが決まってから練習しました。車に乗らないとどこにもいけないので。生活は仕事とプライベートの境目がなくなって、色々いっしょくたになった気がします。

(亮太さん)
妻に車を運転してもらえるようになったのはめちゃくちゃ助かりますね。いっしょくたといえば確かに最悪パジャマでも仕込めちゃう訳ですが、時間の使い方でオンオフ分けてる感じですかね。仕込みの時間・買い出しの時間は業務の時間とか。

(晴香さん)
生活的には車で10分も走らせたらスーパーが何件もあって、スーパーさえあれば生活はできるし、ぽつんと一軒家みたいな田舎に住んでる訳ではないので、住み始めてから「割と便利な田舎やな」と思いましたね。

丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?

(亮太さん)
丹波市には大手チェーンも含めていっぱいハンバーガー屋さんあるじゃないですか。そういった中で、「うちにどれくらいの人がきてくれるんやろうか」みたいなのはありましたね。なんせ飲食業自体も初めてでしたし。

当初の資金繰りはどうされましたか?

(亮太さん)
基本的に二人とも会社員やってたんで貯蓄はそれなりにあったんですが、その自己資金を踏まえて融資も受けました。助成金もいくつか活用させてもらったんですけど、ちょっと予定してたのが一個とれなくて、その分が結構後に響いたりしましたね。

起業をする上でなぜ丹波市を選んだんですか?

(亮太さん)
物件含め色んなご縁があったという一言になりますね。大前提として、店舗兼住居がいいなと思ってました。ちょうどここがそういう形の物件だったのと、改修コストとの兼ね合いで決めました。最初開業についても漠然としてる時期に大阪で探し始めてから、大体2年くらいかかりました。

(晴香さん)
自分達の住めるスペースも十分にあって、玄関も自宅用とお店用と二つあってキレイに分かれてて、駐車スペースもあって、おまけに大きな倉庫までついてて。いい物件見つけたなと。

(亮太さん)
他の市に比べて移住者への対応やサポートの質が高いのかなと感じましたし、実際移住者も他の市に比べて多いような気もしますし、かつ移住して起業した人も多いので、「そういうこともできるエリアだな」という認識は前からありました。色んな人とすぐ繋がってお世話になったり、人との距離感も心地よいなと感じました。

起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?

(亮太さん)
基本的には自分たちで本見たり調べたりですね。当然知り合いに相談したりもありましたけど、大体は自分たちで調べました。

屋号の由来は何でしょう?

(亮太さん)
「FLOPPY」は「ゆるい、やわらかい、ダラダラする」といった意味があるんですけど、それを僕らとしては「肩の力を抜く」というニュアンスで捉えてまして、僕らのやり方、生き方もそうですし、来てもらえるお客さんにも、肩の力を抜いて、無理せず、ゆっくりしていってくださいみたいな空間が出来ればという事で、「FLOPPY BURGER HOUSE」という名前にしました。

(晴香さん)
最後のHOUSEは、スタンドとか、色々考えたんですけど、「家やしなあ」ということで(笑)遠くからお店の方見てもらうと、「ただの一軒家や」ってくらい、本当に家なんですよね。

開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?

(亮太さん)
近辺の飲食店さんは大体14時で閉まるんですが、うちは16時までやってるので、「もうここしか昼やってなかったから」という感じの利用があるのは意外でしたね。

(晴香さん)
ハンバーガーはテイクアウト可能という認知が昔からあるのが良かったのと、火曜だけ夜営業し始めてから以前より近所の方も来て頂けるようになってきました。持って帰って晩御飯にされる方がいたり。バイクで来られる人もオープン当初より増えて、行楽シーズンは全体の2,3割、半分バイクやったという日もありました。

(亮太さん)
当初の計画通りかと言われると、僕らは飲食店未経験なので少し難しいんですが、余裕がある訳ではないけど基本的に生活できているので、有難いことにお客さんには結構来ていただけてるなという印象ですね。

(晴香さん)
めっちゃ儲かるとかはまだまだ夢の話かなあと。でも、身の丈にあった生活だなと思いますね。これだけ来てくれてたら十分かなあという感じもしています。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

(亮太さん)
よかったことは自分のペースで働けることですね。会社は基本的に、自分のやりたい事だけ出来る訳じゃないし、やりたくないことも全部同じだけ責任も乗って来るのがしんどくて。会社のペースで働くことがストレスで体調も崩したし、「やってられへんわ」となったんですが、今は大変なことが当然ありますけど、自分のペースでやれるのがいいです。よくなかったことは特に浮かばないですね。

(晴香さん)
会社員は基本平日出勤で、土日は完全に休みですけど、そんな感じの休みじゃなくなったなというのはあります。休業日でも半日は仕込みしたりとか、買い出ししないと店が回らないので。

(亮太さん)
たしかに純粋な休みは短くなりましたが、それでも我々は二日間休ませてもらってるので、一日休みっていうお店よりは比較的休めてるのかなと。自分たちの時間もとれてかつやりたいことをやれる、それを求めて開業を選んだ部分はあるので。

(晴香さん)
よくなかったことがあるとすれば、休業日の水木にいける他店のハンバーガー屋さんや飲食店が限られていて、食べにいきたいのに選択肢が少ない事ですかね(笑)

将来の展望はどのようにお考えですか?

(亮太さん)
規模を大きくしようとかはないですね。基本的に僕ら二人でやっていくつもりなので、二店舗とか絶対手が回らないですし。ここのお店で如何にクオリティをあげていくか、ですね。今は市外からのお客さんがほとんどですが、「近所のハンバーガー屋さん」みたいな、身の周りの人たちだけでももう少しハンバーガーが身近な存在になれたらいいなと。

(晴香さん)
夜営業の時とか、『晩御飯決まらんかったから来たで』と近所の人が買いにきてくれるとやっぱり嬉しいですね。そんなに安いものではないので、毎週来てほしいとは望んでなくて。何カ月に一回来てくれるだけで十分。

『連休に親戚くるから』と使ってくれるのも嬉しいですね。遠くからも嬉しいけど、丹波市内の人に使ってもらえると選択肢の一つになれたことで、丹波の人の役に立ててる感じがあるので。

起業を考えている人へのアドバイスをお願いします

(亮太さん)
僕らは、「とりあえずやってみたら?」が怖い派なので、ちゃんと石橋叩きまくりながら、シミュレーションされる事をお勧めします。僕とよく似てなかなか行動に移せない人は、行動に移せてなくても計画自体は立てられる。あらゆる想定で計算とかイメトレとか、シミュレーションをいっぱいする。

僕らが結局、一番重要視してるのは“無理をしないこと”。お店だけじゃなく、普段の生活にもお金がかかるので、両方の計算をしっかりと。売上はやってみないとわからないですが、固定費は計算できる。どれくらいあれば生きていけて、その為にいくら売上がいるかの順番で。この計算が甘いとしんどくなると思います。

(晴香さん)
私はもう貯金かなと。実際やってみると「あれもこれも修理が必要」「機器も木材も高くなった」とか進めてみないとわからない費用も沢山あったので。手元にある程度資金を残した上で始めないと、もしお金が尽きた時に飲食店しながら夜工場勤務とか、ダブルワークするとか果たして出来るか疑問なので。

(亮太さん)
貯金を貯める過程で勉強したらいいのかなと思いますね。無駄に時間をかけてお金を貯めるんじゃなくて、色々シミュレーションしながら、飲食店でバイトするならそこで経験積んで、改善点を考えながら色々糧にしながらやれるといいですね。

※この記事は2024年7月11日に取材した情報をもとに作成いたしました。

事業者名  FLOPPY BURGER HOUSE
代表者名  池内亮太
 669-3641
所在地  兵庫県丹波市氷上町絹山624-2
電話番号  0795-78-9666
営業時間  金・土・日・月11~16時/火11~15時、17~19時半/水・木休み
instagram  https://www.instagram.com/floppy.burger.house/