【起業インタビュー】TROIS SOEURS(トロワスール)

三姉妹のママがつくる、安心・安全で、人の顔が見えるケーキ屋さん

移住前はどんな暮らしをされてましたか?

私は富山市の出身で、高校卒業後は大阪の専門学校でお菓子作りを学んだ後、大阪のアパレル会社が経営するカフェで、丹波市に来るまではずっとそこでケーキ作りをしていました。

大阪に出た当初、うちは母子家庭だったこともあって、母と姉と三人で大阪に住んでいました。その後、母と姉が富山に戻ることになって、一人暮らしが始まって。夫と出会って同居するようになったという感じでした。

移住した経緯を教えてください

東北の震災を機に、夫が「手に職をつけたい」と考え、蕎麦打ちを目指して丹波市に移住することになったのでついていくことにしました。

最初はアパート暮らしから始まって、今の家を購入するまでに4回引っ越しましたし、3人の子育てに追われながら私も色んな仕事をしていたんですが、夫が2017年11月に修行先の店を継ぐことになったんです。そこで私もお手伝いしながら予約制のケーキ作りを3年間してたのが結果的に今のお店の下積みになりましたね。

なぜケーキ屋を始めようと思ったんでしょう?

高校生の時、人に喜んでもらうのが好きでよくケーキを作っていたんですけど、仲のいい友達が誕生日だったので、家でケーキを作って、みんなで学校の食堂でお祝いしたんです。それですごい喜んでくれたことがきっかけで、お菓子の道へ行こうと思ったんです。

幼稚園の時に「夢はケーキ屋さん」と書いてたんですが、丹波市に来てから子どもが生まれて、食べるものにこだわりだした側面があって。安心・安全で、人の顔が見えるものが作りたくなったのもあり、お店を持つことにしました。まさか自分はケーキ屋さんになるとは思ってなかったんですけど、夢を叶えてますね。

以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?

家とお店が目と鼻の先なので、子どもが風邪ひいた時も『無理して行かなくていいよ』って言ってあげられるし、夫のお店も近いので子どもの面倒をお互いに見れる環境はすごい有難かったりします。今は子ども優先にできるよう、営業日を金曜だけにさせてもらってたりもしますが、ケーキの受け渡しは時間があれば休日でも対応しますし、そうした時間の都合がつけられるのは大きな違いですね。

生活面は、大阪と比較すれば車なしでは生活できないです。また大阪の時は近所付き合いがほとんどなかったんですが、丹波では知らない人でも『こんにちは』って挨拶するから、周囲の人の顔が大体わかるのが防犯的な面でも良いなあと思います。

丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?

開業するにあたって、商工会さんとか、お店のリフォームをしてくれた工務店さんにお店作りを相談して色々考えるうちに、不安は消える訳ではないけど、「やってみないとわからないな」という気持ちにさせてもらいました。

お店を回せるかについては、子どもがまだ小さいし、フードロスが出るほど作り過ぎないようにしたくて、まずは小さく週一営業にしたんです。ケーキ作りは初めてじゃないし、開業前に3年間の下積みもありましたし、そこまで不安はなかったです。

当初の資金繰りはどうされましたか?

自分でも少し貯めていたのと、足りない分は金融機関で融資を受けました。兵庫県の補助金を申請していたんですけど落ちてしまったので、当初は開業時から色々オブジェとか置く予定だったんですけど、全部カットして。その分スッキリしたお店になりましたけど。

当初はお店を新たに立て直そうと思ってたんですけど、潰すとお金かかるからリノベーションから始めて。大きく構えず、小さくできる範囲で、設備もできる範囲で揃えて、2023年1月に開業して今に至ります。

起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?

それこそ商工会さんだったり、個人事業主の知り合いがちらほらいたので相談に乗ってもらいました。

うちの場合は、自宅と夫の店と、自分のお店全て距離が近い分、ずっと夫婦で一緒に居すぎるので、少し距離感を持っておこうということで事業体は別にしています。お互い忙しい時はサポートしますし、それこそ三姉妹も一緒に手伝ってくれたりしながらやってますね。

屋号の由来は何でしょう?

TROIS SOEURS(トロワスール)はフランス語で「三姉妹」という意味で、なぜ三姉妹にしたかというと、高校卒業後に通っていた専門学校はフランスメインのお菓子作りだったことと、三姉妹のお母さんなので、トロワスールという名前にしました。

でも、よく『三姉妹ってあなたが三姉妹なの?』とか、『あなたが三姉妹で3人でお店切り盛りしてるの?』とよく聞かれるんですけど、違います(笑)
『なんて読むの?』から始まることも多いですけど、屋号が話し始めるいいきっかけをくれてる気もしますね。

開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?

ロスが出ないよう完売を目標にやっているものの、3年間予約制だけでやってた時からのお客さんが今でも来てくれますし、毎年お誕生日に注文くださる方もおられたり、口コミだったり、それこそ毎週の営業日に来てくれる方もいたり。

ここまでinstagramでしか宣伝してないし、看板も出してなければGoogleMAPぐらいしか多分出てないんですが、小さく始めつつも少しずつお客さんは増えてきてるかなと思います。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

よかったのは、私はお店に来てくれた人とのコミュニケーションを大事にしていて、どれだけレジにお客さんが並んでても話すことを欠かさないようにしています。

「自分の接客大丈夫かな」と思うんですけど、以前、相当待たせてしまった方から、その日の夕方に「一人一人丁寧に時間を取られていて、普通なら焦って雑になっちゃうと思うんですが、多分皆さん待っても嫌な気分にはなっておられないだろうと思いました。実際、私がすごいいい気分で帰れたので、なんだかすごく嬉しかったです」とメッセージ頂いたことがあって、なんか報われた気持ちになりました。

よくなかったことは、やっぱり客足が読めないことですね。特に夏場。つくり過ぎてロスが出てしまうんじゃないかとか、収入が不安定になるのもそうで。仕方ない部分ではありますけどね。

将来の展望はどのようにお考えですか?

まず2025年から、普段金曜の営業日に来れない人に来てもらえるよう、少しずつ祝日営業をしてみようかなと思っています。少しずつ営業日を増やして、お店の中にカフェスペースを設けられたらいいなと思っています。近所の人とかが来てくれたら、なんか色んな、たわいもない話ができる場所でありたいなという思いもありつつ。

あと、私の母は43歳から看護学校に通い出して、今は正看護師として働いてるんですが、母は昔からアグレッシブで、きっと私のチャレンジ精神は母からもらってるなと感じてたりします。

でも、そんな母もいずれ一人になるでしょうから、ゆくゆくは一緒に住みたいと思う気持ちがあるので、いつになるかはわかりませんが、2店舗目を開くことがあるなら富山でそれを実現できたらいいなと思っています。

起業を考えている人へのアドバイスをお願いします

そんなアドバイスという程でもないんですが、色んな方とお話して、自分のビジョンや夢は大きく語ることが大事かなと思います。「あれもこれもできない」じゃなくて、「自分がこうやってみたら楽しい」とか、「私ならこうすると喜んでもらえる」とか、夢は語ってもいいじゃないかなと思います。夢は大きく。

もちろんご自身の周りの個人事業主さんとかに相談するのももちろんですが、商工会さんとか、それこそ私でも力になれることがあるのなら、どんな感じか体験談をお話することもできますので。口に出して、やってみることが一番ですね。

※この記事は2024年12月16日に取材した情報をもとに作成いたしました。

 

事業者名  TROIS SOEURS(トロワスール)
代表者名  宮内千佳
住所  兵庫県丹波市市島町梶原189
instagram  https:// www.instagram.com/troissoeurs._/