【起業インタビュー】Vegan Cafe HINABI

水野愛子さん・藤岡絵美さん~自分たちで育てたものを出すお店がしたくて移転を決意したヴィーガンカフェ~


(写真左:水野さん 写真右:藤岡さん)

移住・移転した経緯を教えてください

(水野さん)
元々は私が、2014年に神戸の岡本でお店を開業したんですが、一人で全部切り盛りしてたことで大変だった時に、当時お客さんだった藤岡さんが『家賃も大変だろうからうちでお店したらどう?』と声を掛けてくれて、2020年から神戸市北区にあった藤岡さんの自宅の庭で、テイクアウト専門のお店を3年程させてもらってたんです。

(藤岡さん)
私は以前、神戸で教師をしていて、自然農やヴィーガンに関心を持ったころにHINABIを知って、何回かお店に行っていました。実家が朝来市で、畑をやっていたこともあって作ったものをお店で使ってもらったりもしていました。

それでコロナ禍以降、母が要介護の状態になってしまい、行き来が大変で、生活が維持できなくなって。介護離職の形で教師を辞めることを決断しました。以前から早期もしくは定年退職していずれは畑をしたいと考えていたので、その夢を早く叶える形となりました。その後、畑担当でお店に関わることになったんです。

(水野さん)
藤岡さんの介護が落ち着いた頃、私たちの理想像を考えた時に、「畑をしながらお店ができたらいいな」と思うようになって、ここにたどり着いたという感じですね。丹波以外の地域も沢山見ましたが、畑までの距離とか駐車場など、条件に合うのがここだったんです。

なぜヴィーガンカフェを始めようと思ったんでしょう?

(水野さん)
岡本でお店を始める前、レストランで働いていた時に、肉や魚に触れるのが怖くなってしまった出来事があり、また飲食業は重労働ですし、いつか雇ってもらえなくなるかもしれないから、そうなると自分でやるしかないのかなと思っていました。

岡本の時は色んな方に食べてもらいたいという考えから、ヴィーガンとは謳わず野菜料理の名目で営業していたのですが、結果ヴィーガンの方が沢山お越しになるので、ヴィーガンの方が食べられないものは出さないようにしていました。

その後、藤岡さんと出会って話す中で、今になればもうヴィーガンと聞いてむやみに敬遠される時代でもなくなってきましたし、むしろその考え方や生き方をもっと知ってもらった方がいいのではないかと思い始めて、二人で一緒にやるようになってからHINABIの前にVegan Cafeをつけるようになりました。

以前住んでいた神戸市北区と、仕事や生活での違いは何かありますか?

(水野さん)
私はつい2~3年前に車の免許を取ったので、まだ車の運転が苦手なんです。以前は歩いてスーパーや駅まで行ける場所でしたが、今の生活はちょっとしたお買い物も車がないと難しいので、その辺は不便かなと感じますね。

(藤岡さん)
私は「自給率を上げる」のも目当てにしていたので、畑が近くにあって農薬も化学肥料も使わずに自分たちで育てた食べ物を、自分たちも食べるし、お客様にも食べていただけるというのは、何にも代えがたいなと感じています。自宅と職場が一緒で通勤時間がないのもいいですね。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

(藤岡さん)
大変なこともありますが、自分で働き方・暮らし方を決められる、何かアイデアが浮かべば形にしやすいのはすごくいいなと思っています。

逆に、家が職場なので、休みの日も畑に出たり、ハーブの乾燥作業とか事務仕事とかつい仕事をしてしまうことが多いんですね。全部自分たちで決めたことだし、好きでやってるからいいんですけど、onとoffをつけにくいところはあります。

(水野さん)
休みの日でもずっと仕事のことを考えてしまいますね。でも、通勤時間がないというのは本当にすごくいいですね、幸せです、そこは。

移転する際、具体的な手続きについて誰か相談されましたか?

(藤岡さん)
物件購入の関係で移住相談窓口にはお世話になりました。地域との関係とか、自治会マッチングで丁寧に繋いでいただいて助かりました。補助金関係は事前にネットで調べていて、ほとんど自分たちで書類を整えてから市役所に持っていく感じでした。

丹波市へ移転する際に懸念していたことはありますか?

(藤岡さん)
普通に住むのではなくお店をするので、やはり受け入れていただけないと申し訳ないし、私たちもしんどいしで、ご近所の方の迷惑にならないかが心配でした。あと、畑は自然農でしたかったので、それも受け入れてもらえるかが不安でした。

どちらも物件購入前に自治会とマッチングしてもらう機会があり、それで「全然大丈夫」と受け入れてもらえたので、安心して移住も移転もできました。自然農と言っても、畔はしっかり刈ると決めてますし、周囲に迷惑かけない範囲で調和していけるよう気をつけながらやるようにしています。

移転の段取りはどんな感じだったんでしょう?

(藤岡さん)
2024年2月頃に物件の契約をしましたが、夏まではずっと畑の開墾作業に注力していたので、家や店舗部分の改装作業は10月末までかかりました。改装は、インフラ以外は全部自分達で、床貼りや壁の漆喰塗りなどをしました。

朝来の実家と神戸とをかなり行き来していたので、その間に少しずつ荷物を運んでいって、自分達で運べない大きな冷蔵庫などはトラックを持ってる人にお願いしたので、移転の資金は家の購入と改装くらいで、引っ越しにはそんなにかからずに済みましたね。

屋号の由来は何なんでしょう?

(水野さん)
HINABIは、「ひなびている」から来てるんですけど、お店を始める10年ほど前、友人からの誘いで作ったこともないパンを焼いてた時があって、全然うまく焼けなかったんです。そんな時に料理番組を見てたら、ドイツのマイスターの方が「いいパンの条件は、素朴でひなびていること」と言ってたんですよ。

「ひなびているって何やろう?」と思って調べたら、田舎っぽいという意味で、毎日食べるご飯やパンは、田舎っぽくて、素朴なものでいいんだなっていうのをその時に気づいたんです。その時は自分でお店やるつもりはなかったんですけど、もし自分でやる日がくれば「HINABIにしよう」と決めてました。

移転されてからここまでビジネスの状況いかがですか?

(水野さん)
オープンから3ヶ月程ですし、まだInstagramでしか宣伝できてないのもあって、もしかすると地域の猫が来る方がお客様より多いかもしれません(笑)

でも、口コミで地元の方が来てくださったりとか、遠方から足を運んでくださったりする方もいらっしゃいます。少しずついろんな方に知ってもらえたらいいなと思っています。

(藤岡さん)
以前、神戸のお店作りを手伝ってくれた方からの紹介で丹波のマルシェに出店させてもらってから、立て続けに人の繋がりであちこち出店させてもらうようになって。人の繋がりをとても感じます。

(水野さん)
私たちは丹波市に全然知り合いがいないと思っていたんですけど、すごい近所に以前からの知り合いが住んでいることが後で判明したりして、結果的に誰も知らない場所じゃなかったりしたのも、移転してきてよかったなと感じさせてもらいましたね。

将来の展望はどのようにお考えですか?

(水野さん)
私は野菜と一緒に、ハーブや野草も使ったお料理をもうちょっと出していけるようになりたいなと思っています。

(藤岡さん)
私も畑担当ということで、F.O.L farmの屋号でやらせてもらってるんですが、ハーブに特化した畑を進めていきながら、いずれは田んぼもして、うちで採れたもので出せる割合を増やしていきたいです。

ヴィーガンカフェと謳っていますが、シンプルに言えば野菜料理で日本人に一番馴染みがあると思っています。調味料とかもこだわって選んでいますので、これからもヴィーガンの方に限らず色んな方に体に優しい料理を食べてもらって、元気が出るとか、癒しだと思ってもらえるお店にしていきたいですね。

起業を考えてる人へのアドバイスをお願いします。

(水野さん)
私は“自分ノート”というか、「こんな屋号つけたいな」とか、「この食器使いたいな」とかいうのをずっと書き溜めてたんですね。そういうのを楽しみながら準備していれば、チャンスが来た時にすぐ「これが欲しい!」と言えるんですよね。だから準備をしておくことと、やりたいことがあるなら諦めないことが大事かなと思います。

(藤岡さん)
私みたいに雇われてたところから起業するってすごい勇気がいることだと思うんですね。不安もあると思いますが、日頃からイメージトレーニングというか、自分の中で「こういう風にしていく」と決めてしまえば、ちゃんとその通りになっていくようになるので、イメトレが大事かなと。

あと、起業してすぐ成功するのはなかなか難しいから、少なくとも起業後1年間は収入なくてもやっていけるぐらいの貯金をしておく方が、精神衛生上ゆとりを持てるかなと。想定してなかった思わぬ出費もあったりするので。人生一回きりなので、楽しみながら、計画もしてると安心かなと思います。

※この記事は2025年2月4日に取材した情報をもとに作成いたしました。

 

事業者名  Vegan Cafe HINABI
代表者名  水野愛子
住所  兵庫県丹波市山南町和田83
営業日  金、土、日、月
電話番号  080-2465-1844
Instagram  https://www.instagram.com/hinabi2014/
事業者名  F.O.L farm
代表者名  藤岡絵美
Instagram  https://www.instagram.com/f.o.l_farm/