【起業インタビュー】餅の神田屋

米崎裕彦さん~和菓子屋での開業場所を求め、丹波市へIターン~

移住前はどんな暮らしをされてましたか?

僕と妻は元々神戸出身でして、妻は実家が洋菓子屋さんなのでパティシエとして、僕は建築系の専門学校に通ったあと、現場監督の仕事を4年程してたんですが、「いつか2人で和菓子屋として独立しよう」という思いがあり、丹波市に来るまでの3年間は和菓子屋で修行をしていました。

移住した経緯を教えてください

独立の候補地ありきの結果、という感じですね。和菓子屋がしたかったので、「風情があるところ」で物件を探してたんです。もちろん神戸界隈も。そしたら今の場所が、目の前に大きな神社があって、建物自体も趣があったので、ほぼそれで決めましたね。別に丹波市にゆかりがあった訳ではなかったです。

なぜ和菓子屋を始めようと思ったんでしょう?

独立希望は元々あったんですけど、妻はずっと洋菓子を作ってたので、同じことをしても仕方ないから僕は和菓子に飛び込んだという感じですね。独立したら、僕が和菓子を、その上で妻も例えばわらび餅に生クリームを使うとか、ゼリーとか、パティシエとして培ってきたものをゆくゆくはミックスしていければいいなと話していました。

元々、僕の修行先はその日のうちに召しあがっていただく餅菓子を売っていたので、お土産としてよりはご自身用の、日常使いしていただけるお店として成り立ちそうな場所を探してたという感じでしたね。

以前住んでいた場所と、仕事や生活での違いは何かありますか?

当初、妻がネットでこの物件を見つけ、こっちに向かう道中は目にする景色がどんどん田舎になっていって「大丈夫かなあ」と心配に思ってたんですが、物件自体と周辺はいい印象でしたし、特に不便さもなく、生活自体はなんら変わりなく過ごせてますね。

それとお客様の感じが違うなと思いますね。良い意味で距離感が近くて、自分のおじいちゃんとおばあちゃんが何人もいるみたいです。『野菜あげるわ』『お米あげるわ』と頂き物したりとか、そういうのは神戸ではなかったですね。すごく温かい感じっていうのがあります。

丹波市で起業する際に懸念していたことはありますか?

やっぱり集客ですかね。「ちゃんとお客さん来てくれるかな」というのは一番懸念してました。ただ、これは僕の感覚なんですけど、例えば神戸でスイーツの店といえば単純に数が多いんですよね。要するに、こちらは「競合が少ない」と僕は捉えていたので、やっていけそうかなと思いつつですが。

暮らしの方より店の方がよっぽど不安だったんで、「生活していけるかな」という不安は多少ありましたけど、店がしっかり軌道に乗ればまあ生活できるだろうとは思っていました。

当初の資金繰りはどうされましたか?

基本的には元々貯めてた預金と、あとは商工会さんにもご相談させてもらって、銀行さんと政策金融公庫さんにお世話になりました。

起業する際、具体的な手続きについては誰かに相談されましたか?

丹波市商工会さんですね。物件の内装をお願いしていた業者さんとの打ち合わせで、まちづくり柏原の浜田さんと知り合って、その流れで『商工会さんにもご相談されるといいですよ』と教えてもらって、先ほどの融資の件と合わせて色々教えてもらいました。

そういった起業の支援があるというのは知らずにこっちに来たので、たまたまの流れでしたが結果的にすごく助かりました。

屋号の由来は何でしょう?

普通に「お餅屋さんである」というのが一目で分かるようにしたかったのと、神田は僕の旧姓なんですね。妻は3姉妹の真ん中でして、婿入りする形で僕は米崎になったので、「店名に残してもええんちゃう?“田の字”も入ってるし」という話で決まりましたね。

開業されてからここまで、ビジネスの状況はいかがですか?

まだ1年なのでなんとも言えないところもありますが、おかげさまで当初の計画よりは順調に推移できているかなと。僕らが当初想定していたよりも、毎週とか週に2回とかリピートしてくれるお客様もいらっしゃって、客数が多いという訳ではないんですけど、非常にありがたいですね。

よく来てくださるお客様にとって、飽きがこないよう新商品を作ってinstagramに投稿したりしてますが、『インスタ見たよ』ってすぐパッと買いに来ていただけたり。お祭りとかのイベントだけでなく、日常的にお越しいただけるのは嬉しいです。

起業してよかったこと、逆によくなかったことはありますか?

良かったことは、やっぱり自分でお仕事をするので、自分が作った商品を食べてもらって「美味しかったわ」と言ってもらえることが、やっぱり雇われている時とは違う感覚ですね。当然責任もありますけれど、それは「すごく充実した日々を送れている」という意味では良かったかなと思いますね。

よくなかったことは、あまりないですね。職業柄、例えば「夏場に売上が下がる傾向がある」というのは重々把握してましたし、毎月ずっと同じ売上ではなく、むしろ「波があるのは自分の責任」と思っていますから、そういったことも全てありきで、起業してるつもりです。

将来の展望はどのようにお考えですか?

今はまだ妻と2人でやってるんですけれども、最近になってアルバイト・パートを募集し始めました。これまで量を作りきれなくて、14時とか15時に売切れてしまうこともあったので、まずはそれを解消していきたいなと思っています。

あと、店の奥に囲炉裏があって風情のある和室があるんですけど、人が増えて余裕ができたら飲食スペースとして活用していきたいなと思っています。飲み物なんかもお出しして、色々やっていきたいなというアイデアが沢山わいているんですけど、まずは目の前のことから1つずつですね。

起業を考えている人へのアドバイスをお願いします

自分だけで考え込まずに、色んな方にご相談したら、丹波の方は親身になって答えてくださる方が多いと思うので、ちょっと恥を忍んだ上で、遠慮せずに1から10まで聞いたらいいと思いますね。

知らずに損をすることもあるでしょうし、相談するのが遅すぎてどうしようもなくなるぐらいなら、早めに色々聞いておくのがいいでしょうね。

※この記事は2025年9月12日に取材した情報をもとに作成いたしました。

 

事業者名  餅の神田屋
代表者名  米崎裕彦
住所  兵庫県丹波市柏原町柏原5-2
営業日  水・木・金・土・日9~17時/月・火休み(祝日の場合は営業)
TEL  0795-86-9127
instagram  https:// www.instagram.com/mochino_kandaya/