移住者インタビュー

Vol.78 / 2021.10.03

自分の生活を整えないと、心と身体も整わない。ヨーガに繋がる、丹波市での暮らし。

渡辺トモコさん

こちらの記事は自身も移住者である丹波市移住定住相談窓口メンバーが行なった先輩移住者のインタビューです。新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮し、検温とマスク着用にてインタビューを行っておりますが、写真撮影時のみマスクをはずして撮影させて頂いています。

自分の生活を整えることから、心と身体を整える。インドで修行した後丹波市に移住してきたヨーガインストラクターのご夫婦がいます。今回のインタビューは、ヨーガインストラクターであり版画家でもある渡辺トモコさんにお話を聞きに伺いました。

旦那さんの渡辺顕さんは、2016年の移住者インタビューで取材させて頂きました。

 

ヨーガに出会ったのは10歳の時。人生の「バイブル」に出会う。

 

渡辺さんがヨーガに出会ったのは10歳の時。

当時、日本で最初のヨーガブームがあったんですね。母が新しいもの好きでヨーガに参加していて、そこで買った本が家にあったんです。子どもながらに動物のポーズとかが書かれているその本が面白くて、一人で読んでいました。最初はポーズが面白くて真似をしていたんですが、成長して読み進めていくと子どもながらにめっちゃいいこと書いてあるなって思ったんです。

その本にはヨーガのポーズの他に、生活の心得が記されていたそうです。入り口は面白いポーズからでしたが、記された内容に共感したトモコさんはお母さんにその本をもらい、人生のバイブルとしました。

 

大学は北海道の田舎にある学校を選んだりして、一人暮らしの時もその本を読んでいました。モヤモヤしている時とかにバイブルとして使う感じですね。その本に「自分の生活を整えないと、心も身体も整わない」という言葉があって。心と身体、両方が合わさって自分という存在になるけど、どっちに不具合があってもよろしくないと。

何か日常に疲れた時、立ち返るようにその本を読むと答えが見出せたと話すトモコさん。そこには「執着しない」「得るよりも手放す」など、日常においての心構えが6項目書いてありました。

 

10代の終わりから、ヨーガの経典とかを読むようになって、それは仏教につながります。仏教もヒンドゥー教も同じルーツですが、この考え方は自分の中にずっと持っていたいなと思って、30歳くらいまで独学でヨーガやヒンドゥー教の理解を深めていきました。

 

 

 

 

 

東京→インド→丹波市へ。仕事、そして土地を選んだ理由は偶然とご縁だった。

 

東京でフリーのイラストレーターとして仕事をしていたトモコさん。10代で出会ったヨーガの考え方を深めながら大人になり、また新たなきっかけでヨーガに関わっていくことになります。

 

東京の池袋に住んでいた当時、ヨーガ教室に通おうと思って一番近いヨーガ教室を探したんですね。それで見つけたところに行ってみるとびっくりで、私がバイブルにしていた本を書いた方のお弟子さんだったんです。それで入門して、今も交流があるんですよ。

 

 

10歳からのバイブルに繋がる偶然。ここから旦那さんとともにインド、そして現在の丹波市での暮らしへと偶然に導かれるようにして進んでいくことになります。

 

 

ヨーガの修行のためにインドに行ったのは、東日本大震災の少し後でした。当時はフリーのイラストレーターの仕事をしていたので仕事も落ち着かなかったし、とりあえずインド行こっかなって。

 

半年間お寺でヨーガの修行をして、ビザが半年しかなかったのでどうしようかなと思って。骨を埋めるほどの思い入れがあったわけではないので、インドにいながら日本の物件を探していたんですね。日本に帰っても、私たちは修行するつもりだったからちょうどよい場所はないかと探していたら、丹波市近郊に良い物件が多かったんです。

 

当時はお二人とも修行中の身なので定職についておらず、さらに海外からの問い合わせだったのでほとんどの不動産業者が相手にしてくれなかったのだとか。そんな中、とある丹波市の不動産屋が対応してくれ、帰国したらすぐに家を見に来てくださいねという話になったそうです。同時に日本にいる知人にも良い不動産屋がないか紹介を依頼していたトモコさんですが、偶然にも紹介されたのが同じ不動産屋でした。「これは丹波市に行くしかない」と直感で感じたそうです。

 

帰国して物件を丹波市に見に来て、不動産屋にはヨーガの修行だし、人里離れたところでやりたいと話をしたんです。そしたら「(ヨーガ教室をやったりするなら)どう考えてもだれもいないところでやっても人が来ませんよ」と言われたんです。それでJRの駅があって丹波市の中心部に近い柏原の物件を紹介してもらったんですが、それで正解でしたね(笑)

 

 

 

 

最小単位の自分に目を向けるところからはじまる。ヨーガの考え方。

 

様々なご縁から丹波市の家で旦那さんと共にヨーガ教室を始めることになったトモコさん。ヨーガ教室の生徒さんも増え、人目につく集客のしやすい場所から、現在は丹波市の中でもさらに自然に近い旧家のお屋敷を借りて暮らし、ヨーガと向かい合うことになりました。

 

 

心と身体をつないでいるのが呼吸だと言われますが、普通自分の内臓器官は自立運動をしているので自分で動かせないですよね。呼吸を通して肺を動かすことだけは唯一意識してできる内臓運動なんです。気持ちが焦っていたり、不具合があると呼吸が早くなって心臓も早くなる。わざと呼吸をゆっくり、ゆったりすると気持ちが安定して心も安定してきます。まずはそうして自分に向かい合う。今の自分がどういう呼吸をしているか見てもらって、緊張しているのを感じて、緩める、ということをヨーガで教えています。

外と自分を比べるから不具合がおこる。比べるより自分をまず知るという作業をしてもらっていると、トモコさん。意識を内側に向けて、自分を知る時間になることがヨーガの本質だと感じさせられます。

 

少し話は変わりますが、主人のお父さんが物理学者だったんです。理論物理なので実験等をするわけではないんですが、宇宙の法則を記号化して解明しようとする頭の使い方をされます。そこから理論物理学の世界に興味を持って、他の先生のエッセーを読んだ時に哲学的だなって思ったんです。解釈の仕方が極めて仏教的な見方に近くて。

 

物理の最小、素粒子といいますか、分解して分解して最後に残るものはミクロの世界になっていく。広い世界を見ているのに、そういう小さなところに行き着くっていうのが面白いなと。科学や物理や哲学って、紙一重というかアプローチが違うだけで一緒なんじゃないかと思ったんです。

 

人間の五感というのは外に向かってできていますよね。自分の危険を察知するために視覚・聴覚・触覚などなどが働くんですが、それを一旦塞いでみて自分の方に意識を向けると色んなことが分かってくる。ヨーガの種類の中の「生理的ヨーガ」というのは最終的には瞑想につながります。じーっとしているには、身体がほぐれていないとできなくて、まずは身体をほぐしましょう、というところから始まるんです。

 

 

 

内に意識を向けるための環境が、丹波市にあった。

 

偶然とご縁で丹波市に来たトモコさんでしたが、選んだ結果「当たりだな」と思ったそう。

 

本当に何気なくご縁があって来た丹波市でしたけど、まちの人たちが自分を卑下していないというか、誇りに思っていることをよく感じるんです。この土地がみんな好きなんだなって。だからこそみんなでまちを綺麗にしたいとか、すごく気持ちがクリアだなって思っています。

 

内に目を向け、満たされて外に向かう。日々の暮らしの豊かさを感じ他と比べない精神なら、心豊かに生きることのできる土地を大事に思いやり一緒に守っていこうとする。そんな精神性はヨーガに近いものだったのではないか、そんな風に感じさせられます。

 

今は地元の人とも程よい距離感というか、新しいものを怖がらないでよそ者が来ても見たり参加してくれる人も多いんです。最初はヨーガも全然興味持ってくれないかなと思ってたんですが、年代問わず参加して面白がってくれるというか、好奇心旺盛な方が多くて救われてます。

 

考え方、土地、そして人。偶然の選択でしたが、トモコさんにとっては丹波市での暮らしは大正解だったようです。最後に、この土地でヨーガをやっていくことはマッチしていると思いますか?と質問をさせて頂きました。

 

マッチしていると思います。やっぱり衣食住、というより人間の生活自体が全てヨーガに繋がると思っていて。何を選び取って食べるか、どういうライフスタイルにするか、全て自分に影響してきますよね。今の自分の身体は、自分で選び取って選択してきた結果だと思います。

丹波市という土地は土が元気だなって思うんです。ここで野菜やお米を食べた時、懐かしい味がして。野菜のビタミンやミネラルも残っていて、エネルギーを得られる土地だなって。

 

 

 

内側に向き合うことこそヨーガの本質であり、向き合うために「生活」を整え、身体を整えていく。今回のお話の中で学ばせて頂いたいくつかのお話の中に「だから丹波市が良いのか」と納得させられる点が多々ありました。渡辺さんご夫婦にとって偶然選んだ土地ですが、自分たちに向き合った考え方の芯があったからこそ自然と最適解に近づく選択ができたのではないでしょうか。豊かな生活が波及していくように、トモコさんのヨーガ(トモヨーガ-WEBサイト)が丹波市内外で広がっていってほしいなと感じさせられるインタビューでした。

 

丹波市で活躍する移住者の中でも、渡辺さん夫妻は長く住んで活動を続けている方の一人です。こうやってしっかりとお話を聞くのは編集部としてもはじめてだったのですが、10歳の頃に触れた価値観が今につながっているのは恐れ入りました。自分を整える、自分と向かい合うために丹波市という土地がマッチしているとトモコさんに言われると、妙な説得力があり嬉しい気持ちになります。もし移住を検討されている方がいたら、ぜひ一度トモコさんのヨーガにも足を運んで頂きたいと思いました。