こんなに簡単な作業だとは思わなかった。毎年、年末の作業として続けたいくらい!
仕組みがわかったし、材料も手に入る。次は本漆を使ったより本格的な金継ぎもやってみたいな。
最近何かとその名をよく聞く金継ぎ。企画したスタッフも、田舎に移り住んで衣食住をできるだけ丁寧に暮らそうとする中で、安易に物を捨てない考え方に憧れていました。さらに、単に修復するのではなく、陶器の欠けや割れを柄に見立てる粋にも心惹かれる人が多いのか、募集開始直後からたくさんの問い合わせをいただき満員御礼となったこのイベント。台風急接近で残念ながら参加できなかった方が数名おられましたが、無事に楽しく開催できました。
イベント詳細はこちらから >> 「陶芸家に教わる金継ぎ体験」
当日は、移住歴20年の方から1年未満の方、UターンIターンJターン、日本語と英語とが入り混じりながら、スタッフを含む7名での開催となりました。
冒頭の自己紹介の段から既に、配偶者が陶芸家で最近ご自身も丹波布作家の卵として活動を始めたこと、友人の作品だけど手に入れた直後にバラバラになったお皿を直したい、外国人の配偶者と様々な日本文化を体験したかった、など多種多様なお話が行き交います。
継ぎたい陶器を持参するのが参加の条件でしたが、持ち込まれたものもダメージのほどもそれぞれ。きらびやかな絵柄の九谷焼のデミタスカップやメキシコのお土産のお皿、独特な形の丹波焼のスリップウェアや友人知人の作品まで、多種多様な器が集まりました。表面にかけられた釉薬が一部欠けてしまったものが多かったですが、中にはかろうじて原型がイメージできる位まで細かく割れてしまったものも。
金継ぎにもいろいろな方法がありますが、今回教えてもらったのは、短い時間で未経験者でもチャレンジしやすいもの。しかも、全ての材料と道具がホームセンターで揃うように工夫してくださいました。おかげで、実際の作業を進めながら、講師の伊藤さんの手ほどきと解説にも、お互いの会話にも耳を傾ける余裕が出来ました。
手順もいたって簡単な3ステップ。
①ダメージ部分を糊で修復する
②修復部分の形と手触りを整える
③金色に装飾して乾燥させる
以上。
器の作りやダメージのほどによって、修復方法を選ぶ必要があること、金継ぎは完璧に戻すのではないこと、金継ぎ後の食器の取り扱いについてまで丁寧にご指導いただき、安心感も。普段することのない作業に集中しつつ初めて会う人どうしの会話も弾み、みるみる内に作業が進みます。参加者は口々に「楽しい!」「簡単なのに、きれいにできそう~」「ああ、そういうことか…」など声があがり、わいわいがやがや終始和やかな雰囲気でした。
もう諦めてゴミの日に出そうかと思っていたけど、きれいに直った。湯呑としては使えないけど、せっかく直ったので別の用途として使おうと思う…
こんなに簡単な作業だとは思わなかった。毎年、年末の作業として続けたいくらい!
仕組みがわかったし、材料も手に入る。次は本漆を使ったより本格的な金継ぎもやってみたいな。
もともと金継ぎとは、物が壊れたら直して使うことが当たり前で、簡単に捨てたり新しいものに買い替えたりすることが出来ない時代背景の中で生まれた技術。でも今は食器ひとつとっても、沢山の選択肢の中から安価にいつでもどこでも買えるし、ついつい物が増えて少しくらい数が減っても困らない家庭が多いと思います。そんな現代にあっても、壊れた食器を直してまで使い続けたい、というのは、その器がその人にとって唯一無二のものだから。単なるモノだけどその背景には、手に入れた時の経緯とか一緒に使った人との思い出とか、値段の安さや代替えの安易さでは到底およばない「価値」があるのだと思います。
このイベントを通して、この考え方は田舎への移住にも通じるところがあるなと、ふと気づきました。それまでの暮らしを手放し移住してまで叶えたい暮らしや夢があったり、周囲からは理解されなかったり時に反対されたり、都会にいる時よりお給料が減っても暮らしには豊かさを感じられたり。他者にはただの器でも直してまで使いたいと思う理由があるのと同じように、時に移住とは、自分にとって価値あるものを選ぶための行為にすらなりえます。
そんなことを考えながら、色々な人と人とを繋ぐ機会にもなった今回の交流会。同じ内容の企画は予定していませんが、天候や感染症などで惜しくも参加できなかった方々も含め、沢山のみなさんとまた次のの機会にご一緒したいと思います。
丹波市への移住希望者や移住された方が、地域に根付いてより豊かな暮らしするお手伝いをするために、たんば“移充”計画の会員同士で交流会を実施したり、移住者向けのおすすめ情報などを発信するプログラム。
詳細や過去の開催レポートは「たんば“移充”計画」からご確認ください。